ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

自分の給与を計算できる人だけが給与に不満を言いなさい

「給料が安い」と言う不満をよく聞く。

自分が新入社員であった時にも同僚や上司からその言葉をよく聞いたし、私が部下の給料を決定できる立場になった際にも部下からこの言葉を聞いた。


だがそう言った人たちに「幾らなら適価なのか」と言う質問をすると大抵の人が黙る。「50万円」と言う人がいたとしても、その額面の根拠を聞くとあやふやな言葉しか返ってこない。きちんとした理由を聞いたことはない。

給与に不満を言うくせに、不満なだけで適価を考えたこともないのである。

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そもそもそういった人達に共通なのは「自分が出している利益も計算できない人」になるかと思う。自分が出している利益を計算できれば、そこから適価を想像することは出来る。「この式で適価が出る」という答えがあるわけではないのでそれぞれの職種や環境によって変わるが、自分の出している利益を計算もしていない人が給与に不満を言うのはお門違いである。

そのような人たちが不満を言うのは、給与ではなく自分の能力の低さであるべきだ。給与に不満を言っているのは「仕事のできていない」人になる。仕事を出来ていない、やっていないからこそそんな不満を言う暇があるのである。

身の回りを見て欲しい。仕事を出来る人は給与に不満を言っていない。不満を言うためにサボらず、きちんと働いている。働けば働くほどそれが全て評価される社会ではないが、きちんと働き利益を確保すればそれは少なからず評価されるはずである。それが評価されない会社なら辞めて別の会社で働けばいい。出来る人間はどのような会社でも欲っしている。引く手数多で転職できるはずだ。

それにひきかえ、仕事をできない社員は給与に不満を言う。不満を言うだけで解消できるわけもない。不満を言っている暇があれば利益を上げるために働けばいいのだがそれをしない。仕事ができないから転職はできない。仕事ができないからこそ、今ある環境に不満を言い、仕事ができないのは「自分が正当に評価されていない」、「仕事が出来る環境ではない」と言い訳を並べるのだ。


自分の利益も計算できない人間が、自分の給与に不満がある事自体おかしいのである。事務職や流れ作業など、直接的な利益に貢献していない人たちでも、自分の行なっている業務をきちんと把握していれば、どれほどの利益に貢献しているかは把握できるかと思う。


私が中古パソコンの販売店で働いていた時にもこの問題が起きた。問題という問題でもないが、アルバイトが「給与に不満がある」と言ってきたのだ。私自身もアルバイトであったが、社員になるように言われていた時期で、社長からもよくよくは役員になるようにと声を書けられていたため、私がそのような問題に対処していたのである。

そのアルバイト店員の言い分はこうだった。

「先月は50台のパソコンを売った。販売額は250万円にもなる。それなのに給料が18万円なのは納得が行かない。」

先に上げた、自分のしている仕事の内容を全く把握していない人たちよりは言い分はましだ。だがまだまだ考えが足りていない。

そのアルバイト店員は別の業種での独立を考えており、その資金調達とPCの知識を得るためにその店で働いていたため私は簡単に説明した。

まず、パソコンを何台売ろうが基本的にそれが考慮されることはない。1台5000円のパソコンを50台と1台30万円のパソコンを50台売るのとではその違いが簡単にわかるかと思う。次に、パソコンを何台売ろうが考慮されないように、販売額がいくらであろうとそれも考慮されない。1台30万円のパソコンを月に50台売れば1500万円の売上にはなるが、そのパソコンの仕入れ値が30万円であれば、その商品は仕入れたものを横流ししただけで、1円の利益もない。むしろ、それを販売するだけ赤字になる。

要するに簡単には利益を考えなければならない。販売額が250万円だが、1台あたりの利益は平均して1万円になる。1台売って1万円の粗利。ということは、先月に君は50万円の利益しか上げていない。
さらには、その商品を仕入れてくる人、その商品を清掃しセットアップしてくれる人、輸送してくる人の利益もその1万円の利益から考えなければならない。人件費だけではなく、商品を売るこの店の家賃や電気代、税金もかかる。また、君の雇用を管理してくれている人事の人や売上を管理する経理の人など、君が上げた利益、会社全体の利益からそれらすべてを考えないといけない。

例えば単純にパソコン1台に3人の人が関わっており、利益を3等分すると考えると、一人頭の利益は17万円になる。そうすると、君の給料の18万円を支払うのは赤字になる。そもそも手取りで18万なら保険費用などを考えると25万円ほどの費用が掛かっている。先月の君の利益からでは、この計算上赤字になる。

家賃も200万円ほどになるのでこの店の従業員6人で割ると、一人頭30万円以上も家賃の為に利益を上げなければならない。それも出来ていない。


実際は清掃や仕入れ班は他の店の商品や通販商品も仕入れているためそんな単純な計算ではないのだが、説明のために簡略化した。だが、このように説明をされてその給与の意味がわかったのか不満を漏らさないようになった。不満を漏らす代わりに勉強し、知識を付け、パソコンの販売台数を増やしていった。そうすると、自分の給与が上がることがわかったのかと思う。

だからといって、自分が会社に出している利益が200万円だとしても20万円の給与は高額になる。その利益を出した仕事は「会社があるから」でた利益であり、次に販売する商品開発や設備投資をする為に会社に利益を渡す必要がある。そして、今月は200万かもしれないが、来月は0かもしれない。そのように平均化した利益を考えて給与を考える必要がある。


さらにひどい例を上げておく。
前職での私の部下は手取りの給与が10万円ほどであった。不満を言うのも理解できる額であるが、そいつは赤字を垂れ流し続けていた。10万円規模のWebサイトの制作なら、1日もかけずに製作しなければならないが、そいつは3ヶ月もかけていた。
その様な状態を2年繰り返しているのに雇用があり、10万円の給与があることを幸せに思わなければならない立場であるのに、自分の作業を棚にあげて不満だけを言っていた。最終的には辞めてもらったが、その知識で仕事に付けないことに気づき、もう一度働かせて欲しいと願いでてきたほどになる。


このようにどのような計算であれ、給与に不満なのであれば、適価である給与とその根拠を最低限示さなければならない。だがしかし、月に数千万の利益をあげていたとしても、月の給与を1000万円というのは無理な話になる。「会社があるからその利益がある」ことを考えなければならない。

なぜ仕事するの? ISBN4-04-356601-8
P105.
従業員わずか800人の任天堂が、8万人の日立製作所の利益1200億円を上回って約1500億円の利益を上げたのは92年3月のことです。一人あたりの利益額は任天堂が1億8000万円で、日立は150万円です。はたして、どちらのボーナスやベースアップが高いかといえば、もはや言うまでもありません。

例え一人で1億8000万円の利益を上げたとしても、それは会社や設備、他の人員がいるからになる。そこまで給与を欲し、自分に自信があるのであれば独立して満足行く額の給与を貰えばいい。不満を叫ぶのであればそうして欲しい。

あなたは今その利益を出せるかもしれないが、入社当時は赤字をたれ流していたはずだ。今の仕事はうまく行っているが、将来的に数億円の赤字を出してしまうかもしれない。そのあたりまで全て考えて自分の給与を考え計算し、今の給与に不満を伝えて欲しい。

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