ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

情報技術者試験なんて無意味

私は以前に基本情報技術者試験応用情報技術者試験の学習講座の講師をやっていた。

だが私はすでに講座の講師をやめてしまった。

理由はこの試験が「無意味である」と気がついたからだ。もちろん私が講師を担当した生徒たちはその無意味な資格を取る以上の知識を得ていたのでプログラマの道に進んでいったが、この資格に合格した人たちで就職できない人間たちがいるものうなずける。むしろ就職できなくて当然だ。

今までにも何度も書いているが、この試験の受験者の99%以上が「試験に合格するために勉強して暗記している」。残りの1%未満の方々は自分の知識の証明として取っているのだろうけど、その大多数の人間のせいでその意味が全くない。そう評価されないのだ。

むしろその資格を取得しているということが恥ずかしいと思えるほどになる。

情報処理 2014年07月号

情報処理 2014年07月号


私が講師を辞めることにしたきっかけを書いておく。

これを読んでこの問題の意味がわからなかった方はその99%の方々だ。意味がわかった方は残りの1%の方々で、その方はこんなクソみたいな資格を取る必要はない。取ることが恥ずかしいと感じて堂々としていれば良い。もし取得していればそれは恥ずかしいことであり黙っておいてほしい。


私は色々な講座の講師をやっていた。自分の会社でもやっていたし、大学や専門学校でも講師をしていた。

そんな事情があるので、色々なところから「問題を作ってくれ」と声を書けられることがあった。自分が講師をしている講座以外では断っていたのだが、会社の利益のために某大学の「知識確認問題」として20問ほどの問題を作った。

そしてその解答の平均点は「0点」だ。平均点が0点ということは30人ほどいる生徒の全員が0点だ。


私は手違いかと思った。だが名前などは記入されているし、あてずっぽうなのか何なのか記入している人もいるので答えようと努力している人は少なからずいる。なので手違いではない。

講座でまだ説明がされていない範囲の問題を出したのかと確認したが、全ての範囲の授業が終わっているということだった。なにしろ「知識確認問題」なのですでに範囲が終わり、テストに向けて自主勉強に励んでいるということも聞いていた。

そして最後に、私がやっている講座が誤って実際とは違う範囲の問題を出しており、その学校の授業の範囲と違っていたのではないかと思って教科書を確認させてもらった。もちろん私の問題は範囲内のものであった。

すでに授業を受け、自主勉強に励んでいる状態の知識で受けた結果が0点であったということが確認できただけだ。


例えば問題はこんなものであった(図はフリーハンドなので少しズレているが、実際に出した問題はきちんと作図している)。

「1. 次図のc-MOS NOT回路は右図が理想的なものであるが左図には問題がある。どのような問題があり、それはどのような回路として利用されるか、その特性と理由を書け。」

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「2. p-MOS、n-MOSを組み合わせてAND回路を作れ。回路は理想図とし、上の問題の図を参考に記述すること。」


これがわからないのはまずくないのか。そう思い答えの解説を急遽することにしたのだが、生徒は全く理解していない。例えば2.の解答として下の図を黒板に書いたのだがこれが全くわからないという。

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「忘れていた」や「考えられなかった」のではなく「図の意味がわからない」のだ。勉強が間に合わず図を覚えていない方がいるかもしれないと思い、その問題の前にNOT回路を参考として出している。忘れていてもそれで思い出してくれるかと思ったからだ。

だが忘れていた云々よりも「図の意味がわからない」のだ。この図の説明を聞いていないのか質問すると「見たことがない」と言う。では論理回路はどのように説明を受けたのかと聞くと「MIL記号」を使って聞いたという。ではそのMIL記号に出てくる「ANDやOR、NOT、NAND、NOR」なんかはどう勉強しているのかと聞くと、「出力と入力のtrush table」で説明され、「ANDはこのMIL記号」のように教えられたという。

沈黙するほかなかった


ではトランジスタMOS FETの説明は聞いていないのかと質問した。「それは聞いている」ということだ。であれば、そのMOSを使ってNOTやANDを書いたこの図がなぜわからないのかと質問しても意味がわかっていなかった。

しかたないのでMOSの概念図と、NANDやNORの回路図を書いて説明した。

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そうすると上がってきたのが、「なぜNANDとNORを書くのか。ANDとORを書いてほしい」と言うものであった。「ANDは先の問題の2.の解答として書いているだろう」と答えるとわけのわからない再質問だ。「それはNANDを反転しているNOT(NAND)だ。ANDの回路を書いてほしい」。

ここで状態がわかった。MOSの説明はリレースイッチやトランジスタ、ICの流れで説明し、別の話として論理回路を説明している。その論理回路がICで作られているという話はしているが、その中身がどう作られ、その回路がどう再現されているかの説明がされていない。NOTにしても、そのMOSで作るということを知らなかったという。

だからMOSでは反転のないANDやORを作ることが難しく、NANDやNORのNOTとしてその値を得てANDやORを再現しているということもわかっていなかった。これであれば全加算器や半加算器を計算方法しか理解していないのも仕方がない。


このように大学や専門学校であったとしても試験問題とその解き方の解説をしているだけだ。専門学校ならまだしも大学でこのレベルはエグい。その解き方を解説しているだけなので、それがなぜそうなっているのかという根本的なことが解説されていない。「コンピュータが何故2進数を使うのか」と言うこともわかっていないだろう。

これらの内容を知ったので私は今までにしていた自分の無駄さを反省した。たしかに私が教えてきた生徒は概念から理解しているので合格率はほぼ100%だ。だがその合格した人々も、結局の所それら「解き方を知っている人たち」と資格的な判断では同じになる。

こんなバカバカしいことはない。


自動車のエンジニアと名乗っている人が、タイヤの空気を入れたり、タイヤ交換、オイル交換が出来るだけではそれはエンジニアと呼べないだろう。最近のエンジンはブラックボックスだが、それらの仕組みを知り動作という根本的なところから理解し、それらの問題を解決する方法を提示できるからエンジニアではないのだろうか。

この資格を持っている人たちは「空気圧が○○なら空気を入れる」と言う程度のことを知っているだけで、空気圧が低ければどんな問題が起きるのか、それはなぜかということも理解していない人たちだ。

私はこの時に世間の資格というものの認識について知った。


だからこそ無意味なことはやるまいと講師をやめた。