ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

失敗しろ

なぜか世間では、失敗が怖い。失敗をしたらダメだ。失敗しないようにしなければならない。と言うのがベースに考えられているようだ。私の周りでも良くこう考えている人がおり、失敗しないようにと相談されることがある。

私はそう相談してくる人には漏れ無く「なぜ失敗したらダメなのか」と質問するのだが、その解答が的確だったことはない。大抵が「失敗したら行けないのは当然でしょ」と言うような返事だ。私は「なぜダメなのか」と聞いているのに、「それは当然」と言うのは解答になっていない。当然ならその当然たる理由を教えてほしい。

単に「失敗してはいけない」と幼少期から刷り込まれて来たためにそれが固定概念として染み付いてしまっているのだろう。

是非とも「失敗してはいけない理由」を考えてほしい。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)


これは以前に書いた「成功は失敗のもと」と言うのにも関連するかと思う。「失敗」と言うそもそもの認識が間違っているから失敗を恐れているのだろう。


例えば私が過去に働いていた職場でも、私の部下が私に何度も確認をしてきた。何度も何度も何度も何度もだ。

私は「私が責任をとるから好きにしろ。とにかく早くしろ。」と言っているのに、ちょこちょこと進捗の報告に来、さらにはその際に変更点などの確認をしてくる。「好きにしろ」と言っているのだから変更があっても目的が変わらないならどうしてもいいのになぜ確認しに来るのだろうか。

まぁ毎度毎度確認をする理由は「私は確認しました。失敗してもそれを承認したあなたの責任です。」と言う責任のなすりつけと、その責任の所在を自分から切り離しておきたいという考えであろう。だが私は最初から「私が責任を取る」と明言している。それなのにしつこいくらいに確認してくる。それくらいに失敗すること、そしてその責任が自分にあるということに恐れがあるのだろう。


私は本当に失敗などどうでもいいと思っている。それが仕事でもだ。とにかく速く行動すれば、それが失敗だろうと失敗じゃなかろうと、行動が速い分速く結果が返ってくる。

速く結果が帰ってくれば、その失敗というものの損失も少ない。例えば3ヶ月かけて入念に調査し、準備し、いざ行動してそれが失敗なら会社的には人件費だけでも少なくとも数百万円の損失になる。それが当人だけでなく数人のチームで動いていれば1000万円を簡単に超える。

そんな損失をポコポコと出されては会社は溜まったものではない。当人は失敗してこの損失を出すというのがとにかく怖いのだろう。だからこそ失敗しないように入念に調査し、準備し、もし失敗したとしても自分の責任にならないように転嫁しておく。そしていざ行動して失敗しそうになれば、すぐさま弱音を吐き始め、その行動を最後まで全力で遂行しようとはしない。すぐに損失を最小限に抑えるように保守に走るのだ。


確かに損失が出るのは痛いが、会社は全ての行動に置いて成功することは望んでいない。次々に挑戦し、失敗を繰り返す中で、一つの成功を速く出して欲しいのだ。

例えば成功する確率が十分の一で、そして成功時の利益は1億だとする。実際にはこんな確率や利益ははっきりとしていないが、計算を単純化する参考として例示する。

例えば一つの挑戦に3ヶ月かけるとすると、10の挑戦をするのに2年半の時間がかかる。そしてその間には1億以上のコストがかかるので、例え成功例が出たとしてもその利益は無く赤字だ。そして、その3ヶ月の準備期間中に「調査の結果実行しない」と言う例もあるかと思うので、実際には3年近くの月日がかかり、それにより赤字も膨らむ。

だが、調査や準備は必要だとしても、それらをドンドンと前向きに「失敗しても良い」、「失敗してもそれは実施調査だ」と考えて行動していくとする。そうして一つのチャレンジを1ヶ月で行えるとすれば、10個挑戦しても1年もかからず、そのコストは成功時の利益の半分以下になる。そしてそれ以降も、実施調査の結果をベースにドンドンと挑戦していき利益を上げることが出来る。


私が求めているのはこれだ。ドンドンと失敗して経験を積み重ねてほしい。だが心配に任せて無駄に調査や準備をすることは意味がないので、とにかく速く実践して結果を出すことだ。どれだけ予算をかけて調査しても失敗があることは、MicrosoftAppleIBMSONY等の大企業を見ても明らかであろう。

失敗することはむしろ当たり前なのだ。失敗しないと思っていることほど怖い物はない。

失敗することが怖いという考えを突き詰めていくと、「失敗が怖いので挑戦しない」となってしまう。そうなれば挑戦など何もすること無く現在利益上がっているサービスを保守的に続けていくことだろう。未来永劫に利益が上がり続けるシステムなど無い。現在までもないし、今後もない。

例えば現在1000万ユーザを持つサービスでも、そのサービスを保守的に続けていくだけではユーザはどんどんと新しいサービスに移動していく。離脱率が月に5%あるとすれば、そのサービスの1年後のユーザ数はいくらあるかわかるだろうか?540万360人だ。5%の流出でも1年後には半分近くになっている。そしてサービスというものはユーザがユーザを呼んでいるので、ユーザが少なくなればなるほど離脱は加速する。

1年平均の離脱率が20%だとすれば、1年後には68720人しか残っていない。10%のユーザも残っていない。


保守的に行動するとはこのような危険性があるのだ。私からすれば保守的な行動こそが根源的な失敗だ。だから調査や準備など完璧にする必要はなく、挑戦中に臨機応変に変更していけば良い。


失敗なぞ恐れずに挑戦してほしい。失敗を恐れることが失敗だ。