ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

世間のCMSが巨大過ぎる どこのニーズに合わせてるんだ

これは私がWebサイトの制作を仕事にし始めてすぐに抱いた感想になる。

私が初めてCMSを業務に利用したのはMovableTypeになるだろう。ちょうどMTOSが公開されたということで、フリーソフトウェアに力を入れていた私はそれを使い始めた。ライセンスをGPLにするという人間からしてあまりライセンスに拘りはなかったのだろうが、MTOSのおかげでMovableTypeyを使い始めたという人も私の他にも多くいるかと思う。

そして使い始めてすぐに閉口した。CMSとはもちろんContent Management Systemのことだ。

だが、MovableTypeを使うとコンテンツをマネージメントするシステム部分は極わずかで、それは全体の5%以下のシステムにしか感知していない。その他の95%以上の部分はコンテンツとは関係なく、ユーザ管理だったりシステム管理だったりテンプレート管理だったりと、コンテンツとは無関係の部分になる。

もちろんここでの「コンテンツ」とは、Webサイトなりに実際に表示されるものだ。コンテンツは「内容」と言う意味なので、その内容とは何かという定義はユーザによって解釈が異なるかも知れないが、CMSでいうコンテンツとはWebサイトに表示される「要素」と言う意味としては認識は統一されているのではないだろうか。

だがしかし、その統一されているはずの認識が実際に公開されている数々のCMSを試してみた結果、どれもこれも認識とは不一致の内容となってしまっている。どれもこれもその95%に力を入れ、管理パネルに表示されているメニューの大半がそれら95%を操作するためのものとなってしまっている。

これはMovableTypeだろうが、WordPressだろうがその他のCMSだろうが同じようなものだ。WordPressはユーザからうまくメニューを隠している部分もあるが、その分わかりづらくなっており、結局の所95%の部分を使おうとするとよくわからないものとなってしまっている。

Movable Type 6 本格活用ガイドブック (Web Designing BOOKS)

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考えて欲しい。CMSとは誰のために作られているものだろうか。私はCMSを使っていない。自分でWebサイトの制作が出来るからだ。

CMSとは主に、自分でWebサイトの制作が出来ない人々が主なユーザになるのではないだろうか。当時の会社でも「自分でWebサイトの更新ができるので、更新の度に費用がかからない」と宣伝していた。それまでにはホームページの制作業者なるものがホームページの制作をし、保守し、更新までも面倒を見ていた。それ故にちょっとしたメニューの修正なんかでも制作業者に依頼して更新して貰う必要が有り、更新の度に費用がかかってしまうものであった。

だがCMSならその更新を自分でできるがために、そういった都度の更新費用がかからないというのがCMS導入業者の売りとなっているようだ。私が働いていた会社でなくても、現在も調べると多くのCMS導入業者がそのような宣伝文句を出している。


これからもわかるように、CMSとは主にはWebサイトの制作が出来ないユーザのために、Webサイトの制作業者が導入し、その後をユーザが保守するためのシステムであるとも言えるかと思う。それ故に、自分で自社でWebサイトの制作が出来る会社ではわざわざCMSを導入することはなく、導入するとすると、更新担当に事務や広報のように自身でHTMLがかけないようなユーザが含まれる場合や、数百、数千ページというコンテンツを扱うような大規模なサイトでフォーマット化のために導入するようなものではないだろうか。

私は今までに数百のサイトを制作し数種のCMSをそれらに導入してきたが、CMSの用途の半数以上は前者の「Webページを追加が出来ないユーザのため」にCMSを導入したもので、残りは「更新されることはないがCMS導入費として利益を出すため」と言う理由で導入したものになる。

よって、少なくとも私が今までに仕事をしてきたCMSの全ての用途は、「知識のないユーザの為」ということになる。


だがしかし、先に書いたようにCMSの大部分のシステムがその「コンテンツ」とは関係ない部分の操作に割り当てられている。例えばMovableTypeでは権限(ロール)設定で特定の権限を与えないことでメニューを非表示にすることもできるが、それは非表示にするだけであり根本的なシステムは変わらない。システムがわからないので、根本的なシステムの使い方も変わらない。

ユーザが求めているのは「新着情報の追加」や「ブログの更新」、「Webページの修正」程度であるにも関わらず、それらは先から書いている通りシステムの極僅かも僅かな部分になる。システムのメニューからすれば5%程度と書いたが、コードベースで言うとそれらを操作するのは1%にも満たないだろう。それ程に大部分がCMSの本質とは関係のない部分に注がれている。


ではその関係ない部分とは何か。Webサイトの製作者が操作するメニューということだ。

MovableTypeでは先に書いたようにユーザの管理やその権限設定、テンプレート設定やその他のシステム設定などが管理パネルの主な操作項目となっている。だが、ユーザ管理ならまだしも、テンプレート設定はWebサイトの製作者は必要としているのだろうか。少なくとも私は必要としていなかった。そもそもにそれがあることで不便で仕方がなかった。

管理パネルでテンプレートのコードを書くということは、エディタの操作が何もない(置換すらもない)textareaでインデントも自分で入力しつつテンプレートを制作するということが。こんな不便なことはないことはわかってもらえるだろう。いや、実際にその画面でテンプレートを制作している人すら私は見たことがない。テキストエディタでテンプレートタグを書き、それを管理パネルにコピーし、保存し、リロードして実際の表示を確認していたし、私の周りの人間もそうしていた。

あまりの不便さ故、Emacsでデータベースとのコネクタを作り、Emacs上で直接テンプレートを操作できるようにするなど、色々なツールを作り倒していたほどになる。それ程に管理パネルでテンプレートを作るとはやりづらいものだ。

Webサイトの製作者はHTMLを自分で書けるわけだし、書けない人もDreamWeaverなどでHTMLを生成するのだ。ということはそんな管理パネルなど無くても、ファイルをFTPでPUTするなり出来るようにすることが利便性というものではないだろうか。

ユーザ管理は別としてと書いたが、私が今までに導入したCMSの中にユーザ管理が必要なシステムはなかった。ブログを担当するライターが30人ほどいるようなシステムでもライターの名前のユーザを持っていればいいだけで、それぞれ可能な権限設定など必要はなかった。むしろ、ライターにおける権限設定をするほうが混乱を招くということで導入されなかったほどになる。


であればCMSに必要な機能とはなんだろうか。「ユーザ権限設定」いらない。「テンプレート設定」いらない。「何も」いらない。

CMSとはコンテンツを作ったり削除したり編集したりするだけのシステムで十分ではないだろうか。私が知る限りではこれらに特化したものは見つけられない。どれもこれも機能の豊富さを売りにし、管理パネルから操作できることの多さを誇っている。CMSの本質を考え、それを使うユーザのことを考えるのであればこんな馬鹿げたことはないだろう。

私がMovableTypeを導入し、その管理方法のマニュアルを作る際に「このメニューは触らないで下さい」とどれほど多く記述しただろうか。それ程にユーザには必要のないものなのだ。

一部のユーザのためだけに必要なのなら、それは製品を分けるべきではないだろうか。MovableTypeでもエンタープライズは分かれているが、エンタープライズでもない製品にユーザのロール設定をあそこまで細かく分けれるニーズはどれほどあるのだろうか。


私も実際にこのような馬鹿げたシステムをお客さんに高い金を貰って導入するのは馬鹿らしいと、最終的には簡易的な掲示板CGIのテンプレートを修正して新着情報やブログとして使ってもらっていた。世間のニーズとは結局この程度のものなのだ。例えば新着情報をMicrosoft Wordの様なコントロールメニューで編集できるようにしても、文字サイズをバカでかくした上に赤い文字にされるというような編集がされるだけだ。

そうであればそもそもに文字色や文字の大きさを変えれるようにしておくべきではない。



今振り返ってみると、CMSとはいかに馬鹿げたものなのだろうか。5年ほど前までは世間ではCMS!!CMS!!と騒がれていたが、それはホームページの制作業者が「導入費」や「保守費用」として高額に設定できるからという理由だけではないだろうか。


今では無職なので業務で使うことはないが、現在業務としてWebサイトを制作している人たちがCMSの呪縛から抜け出すことが出来るように祈るだけでは足りない。自分で簡単なCGIを作ってみようかな。