ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

転職を繰り返す人間の評価は「飽きやすい」ではない

先日に「海外で働くかわいそうな人たち」を書き、その中でこう書いた。

稀にヘッドハント的な引き抜きで転職をする人間がいる。もちろん我社にもいる。そういった人間は「引き抜きで退職するような人間」として扱われるし、海外で働く日本人も「日本では働けない人間」として扱われるだろう。

今回はこれについて書く。

これは日本とアメリカでは多少考え方が異なるのだが、わたしの経験上では基本的な考えはどちらでも変わらない。

日本では「転職を繰り返すのは不利」と流布されており、その理由として「飽きやすい人間」として低評価されると言われるようだがそれは全く違う。

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私のグループ会社では(各グループ会社の)社長が新入社員の面接をし最終決定もするようにしている。それは色々な理由があるのだが、簡単には「採用のミス」は担当社員のやる気を非常に大きく削ぎ、さらにはその損失の大きさから「慎重になりすぎる」というのが主な理由に成る。

採用の責任者を経験したことがあれば一度は「違う」と思われる人間を雇用したことがあるだろう。そしてその人間を採用したことにより周囲が混乱することや、その人間を解雇するために担当各所に非常に大きな労力を使わせてしまう。人を解雇するというのはどうしても後ろめたい活動になり、責任者以外にも非常に大きなストレスを抱えてしまう。また、その「解雇」と言う事実から他の社員にもプレッシャーがかかってしまうことにもなる。

さらに、新入社員の採用には一人あたり1000万円近くの費用をかけており、その採用の失敗をすると丸丸その利益が飛んでしまう。さらには解雇となるとそれまでの給与や、その解雇に伴う費用でどんどんと損失が膨らむ。業務でその程度の損失が出る要因は日々存在するが、採用の失敗となると何の利益も生み出さないただの失敗だ。周囲の教育などに駆り出された社員には「無駄」だったと徒労に終わりこちらもやる気が削がれてしまうし、その社員が生み出していたはずの利益も損失に直結してしまう。

こういった理由から私の会社やグループ会社では社長がその責任を全て負うということで最終的な合否を出すことにしている。社長は面接や選考にも参加はするが、基本的には担当各部署が判断し、その最終判断をそれまでの参加内容から判断するだけだ。


私の会社は大学の新卒は基本的に取らないために中途採用が主になる。その中で半数以上の方が10年間に3回以上の転職をしている。私もそうだったが、20代で5回以上の転職をく理解している人が応募してくるのも珍しくない。

だが私は先に書いたように、転職を繰り返す人間を低評価することはない。むしろ高評価だ。

世間一般の人間は転職をあまりしないようだがそれはなぜだろうか。理由としては「次の仕事が見つからないかもしれないという恐怖」や「また一からやり直すのは嫌だ」と言うことだろう。このような理由を考えると、40代で初めての転職というような人たちのほうが私からすれば低評価になる。

何度も転職を繰り返せるということは、何らかの技術や知識を持っており、その人間を欲する会社が多いから転職が成功するのだ。あなたが今の会社を明日辞める覚悟はあるだろうか。多くの方が先の理由で心配に想うだろう。

だが転職を繰り返す方はそれを心配に思わず、媚びへつらい嫌々でも今の立場にしがみつこうとしてこなかった証拠だ。

こういった理由を考えると、転職を繰り返す人間が好評価であることはわかってもらえるかと想う。


だが、だからといって転職を繰り返す人間を採用するかというのは別の問題だ。

先の記事にも書いたように、どこの会社にもヘッドハントで転職をする人間やジョブホッパーと呼ばれる高待遇の会社に次々と転職していく人がいる。

そういった人たちは職務能力としては非常に高評価が出来るのだが、採用するとなる場合に応じてというものになる。例えば「新規事業立ち上げ」のような部署であればそういった人間を能動的に採用するが、「グループ会社の新規立ち上げ」のような時であればそういった人間は採用しない。そういった時は高校の新卒を採用することが多い。

理由はこちらも単純で、転職を繰り返している人間というのは、採用してもすぐに別の会社に転職していくからに成る。うちもヘッドハントをすることはあるが、ヘッドハントをして採用した人間は、別の会社からさらにヘッドハントされて行くという前提で採用する。

例えば一昨年の初めに新たに会社を立ち上げたのだが、そのなかで教育のために他社からヘッドハントした人間がいる。その人間は採用の時点から二年程度で辞めるだろうという前提で採用している。新卒の教育は2年もあれば十分であるので、3年目にはその人に担当してもらう必要はない。であれば、別部署の人間として働いてもらうか、それが嫌なら辞めてもらうかという二択になる。「解雇する」のは非常に難儀なので、基本的には自ら辞めてもらう他ない。もちろんこれは契約時点か業務内容を変更するという契約は交わしている。それによって、当事者も2年を満期とする転職を前提にしてもらっている。

ジョブホッパーもよく応募してくるが、その人たちも基本的には同条件だ。基本的には新事業立ち上げの2年ほどはその人に率先して対応してもらう必要があるが、それ以降は社内の人間が役職を持つためジョブホッパーの方は業務上の利益が低くなり給与も相対的に低くなる。そうなると待遇も悪くなるために別の会社にジョブホッピングしていく。

結局は採用時点からそれまでの経歴に合わせて採用後も考えるということだ。「飽きやすいから低評価」ということではなく、「辞めやすいから辞めてもらう前提」と言うことで評価するのだ。


私の会社もこのような人たちに支えられている部分もあるが、当事者の方たちは条件の良い自分の好きな会社に渡り歩くと言う自分の望んだ結果になっており、私達からすれば都合のいい時にだけ都合のいいように働いてくれる人員なのだ。

だが私が勝手ながら心配しているのは、こういった人たちが多くいる割に大半が40歳未満だ。50歳近いジョブホッパーを見ることはない。ジョブホッパーもいつかは自分の転職が難しくなり、どこかの会社にしがみつくという選択をするのだろうか。それとも転職がうまくいかず自営業という選択をするのだろうか。


明日は我が身ということもあるが、私は20回近く転職(グループ会社内含む)しているので世間の会社からの評価は非常に悪いだろう。