ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

タイムマシンをつくろう! P.C.W. デイヴィス(著), 林 一(著)

「タイムマシンを作る」。こう言っている人を見るとあなたはどう感じるだろうか。

本書にはその「タイムマシンの作り方」が書かれている。

例えば200年前からすれば「空を自由に飛ぶ乗り物を作る('浮きあがる'ではない)」と言っている人がいれば「頭がおかしい人」と罵られただろう。100年前からすれば「宇宙に行く、月に行く乗り物を作る」と言っている人がいればそれもまた「頭がおかしい人」と言われることは間違いない。今現在にある「タイムマシンを作る」と言っている人に対しての冷たい眼差しはその時代のそれと同じだろう。

タイムマシンをつくろう!

タイムマシンをつくろう!


「タイムマシンは存在しない」や、「タイムマシンが出来るわけがない」と言っているのは単なる科学というものを知らない人たちだろう。それは「宇宙人は居ない」と言っているのと同じくらいに自分よがりな馬鹿げたものだ。

過去にUFOの話をしていた時に、「UFOがあるわけがない。一番近い生命体がいる可能性がある星でも300光年も離れている。300年もかけて地球に来る意味はなにか。」とわけのわからない持論を展開している人が居た。その人曰く、「光速不変の原理から光の速度を超えることは出来ないので光速で移動したとしても300年を短縮できない」らしい。その人を私は「可哀想な人なんだな」と思い説明しなかったが、完全に光速不変の原理を勘違いしているし、そもそも相対性理論すら理解できていない。

まず、光速を超えることは「出来ない」というのは嘘だ。光速より遅いものを光速に近づけていくと重さが増していく。速度が光速になると重さが無限に成るためにそこから更に加速するには無限のエネルギーがいるために光速より遅いものを光速よりも高速にするというのが出来ないというのは事実だ。だが高速より速い物体は存在する事が予想されている。だがその物体は高速より遅くなることが出来ないという理論でもある。

そして、光速で移動できるとすればそれに時間はない。光速で移動するということは時間が止まっているのと同じだ。例えば光速の99.99%の速度を出すことが出来るとすれば約73倍の時間の遅れが発生する。要するに、地上での73年がその速度で移動しているとたった1年でしか無いのだ。光速の99.99%であれば「もう少しで光速じゃないか」と思われるかも知れないが、光速に近づくに連れて遅れ因子は比例して増加するので、もし光速の99.999%に加速することが出来れば約227倍、99.9999%に加速することが出来れば約710倍とドンドンと遅れは加速する。

こんな速度で移動できるわけがないと考えている方も居るかも知れないが、例えばCENRのLEPでは光速の99.999999999%に電子を加速することが出来る。この速度であれば約23000倍に達する。「もう一歩で光速じゃないか」と思われるかも知れないが、先に書いたように高速に近づくに連れて質量が増加する為に高速に近づけることは出来ても、実質的に光速にすることは出来ない。

0.00009%と聞くと些細なものと感じるかも知れないが、ビルゲイツの資産である7兆円からすれば0.00009%でも630万円という、我々からしたら大金に成るとの同じようなものだ。

だがこれは現実問題として高速にして「時間を止める」必要はなく、高速に限りなく近づけることで実質的に時間はいくらでも確保が出来るということになるので問題はないだろう。例えば今我々のいる天の川銀河の直系は約10万光年という膨大な大きさになるが、先の電子の速度と同じ速度で移動できるとなると、約4年で横切ることが可能と成るのだ。こう考えると、我々の天の川銀河以外の銀河系からでもいくらでもUFO、宇宙人は来る可能性はあるのだ。

また、「300年もかけてくるわけがない」と言う考えもいかにも人間(地球人)よがりの考え方だろう。なぜ「300年」と言う期間が「長い」と考えるのであろうか。それは人間の寿命から考えてのことだろう。またなぜ「死」があることを前提としているのだろうか。例えば地球上でも「死」の無い生物は巨万といる。「寿命」や「死」と言う概念があるのは二倍体以上の生物だけで、一倍体のバクテリア(アメーバ)なんかには「死」はない。これは二倍体生物が進化と引き換えに死を選んだ(前時代のものを排除する)のであり、一倍体の生物は生まれた当初から現在まで数億年という期間を生き続けている。そんな生物からすれば300年など何の問題もない期間だ。寿命が1年の生物からすれば、2年間も働かずにいる私を見て「何のために生きてるんだ」と想うのと同じようなものだろう。

と、このように世間によくいる「科学信仰」と言うような人たちは、正しい知識も勉強意欲も持ち合わせずにいる。正しい知識があればタイムマシンの製造が可能であることはわかるはずになる。だがそのタイムマシンを実際に動かすことに置いて、いくつもの障壁があるとして実質的にタイムワープは出来ないだろうという事に成るのだ。


本書ではこの記事にあるような時間の遅れによるタイムワープと、ワームホールを利用したタイムワープの二つの面からタイムマシンについて説明している。またその具体的な製造方法と、それに必要なエネルギーにまで言及している点に置いては数少ない現実的な書籍に成るかと想う。

だがそれ故に本書を読むのにはある程度の科学的な知識が必要になり、例えばブラックホールについてやシュワルツシルト半径などの宇宙についての知識も多少必要に成るかと想う。具体的な方法ではなく概要をつかめればいいと想うのであれば知識がなくてもある程度は理解できるだろう。