ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

ディズニーの魔法のおそうじ 安孫子 薫(著)

2011年の地震以降、当時のディズニーランドの対応について賞賛する書籍を何冊か見てきた(読んでない)が、興味を持ちつつもなかなか読むことが出来なかった。

そのようになかなか読めずにきたが、たまたまた書店でこの書籍が目に入り購入した。今までこういった書籍を読まずにいたのは、その当時の対応のみに焦点を当てた書籍では「その対応がとれたディズニーランドの日頃の教育方法、理念について知ることはできないのではないか」と感じていたから。というのは嘘で、買いたい書籍は一冊あったのだが手持ち金がなかったため買わずそのまま読めていなかったという理由だけ。だが、それを読んでいたら本書を読むことはなかったかもしれないと思うと幸運であったと思う。それほど本書を読めたのは幸運であったと感じる。

本書は地震の時の対応にはふれられておらず(原典が地震以前に書かれた書籍の新書版の為)、その当時に何故そのような対応が行えたのかというディズニーランドの日頃からの教育方針、いや、教育という言葉はなく企業方針や理念、行動基準が解説され、著者が行った東京ディズニーランドに合わせた改良や、現在も改良が続けられていること、その改良の必要性が書かれている。

著者はディズニーランド開業前よりオリエンタルランドに所属し、開業後は清掃部門の部長として長年ディズニーランドの清掃を支えてきた人物。本当に素晴らしい人に思える。

ディズニーの魔法のおそうじ (小学館101新書)

ディズニーの魔法のおそうじ (小学館101新書)


清掃に関わる人や、清掃に関わる人の上司に当たる人には是非読んで頂きたい。読んで頂ければ清掃の重要性がわかるだけではなく、清掃をしなければならないという事も理解できるかと思う。押し付けがましい言葉はなく、著者の経験やディズニーランドの理念を紹介しているだけになる。その分、内容も自分なりに解釈することができ自分なりの解釈で実践できると思う。本書にも「清掃にはマニュアルはなく、状況に応じて判断しなければならない」と書かれているほど。

私は清掃スタッフとして働いた経験がないため清掃の大変さは理解していないが、たしかに、トイレや店内が汚れているお店には「次もまた来たい」 と思うことは出来ない。トイレや店内が汚れていると、商品もその品質でしか管理されておらず、お客さんのことも「その程度にしか考えていない」と思ってしまう。そう思っている店では商品が安かったとしても買いたくない。

逆にこの本を読むと、「ここまでお客様の事を考えてくれているのであればディズニーランドに行ってみたい。」と思ってしまうほど。今までにディズニーランドは何回か行ったことがあるがあるが、また行きたいと思える要因はそこにあったのかもしれない。

P93.
私がもっとも驚いたのは、チャックさんが清掃の終わった建物をチェックする際、必ず靴を脱いでから入っていったことでした。
それは、きれいにしたところはゲストのための場所であり、自分たちが決して汚してはならない場所だという、チャックさん自信から湧き出た、あたり前の行動だったのです。私はそこに、本物のプロフェッショナルとしての誇りを見ました。

著者の清掃の恩師と言える、チャック・ボヤージャン氏の行動として紹介されている。これがディズニーランドの清掃活動の総まとめのように思えた。

P116
施設の設計段階からそうじすることを計算する
「なぜ清掃部門が設計に口出しできるのか」

では、いかにディズニーランドが清掃を基準に考えているかがわかると思う。清掃が難しいようであれば設計を変更することもあるほど、ディズニーランドは「お掃除することを計算して建てられている」。

P128
カストーディアルキャストだけが清潔さにこだわるのではなく、セキュリティーキャストだけが防犯に気遣うわけでもありません。
すべてのキャストが全ての職種に感心を持ち、ゲストのハピネスのために互いに協力しあっているのです。

この一文からもいかにディズニーランドがゲストに幸福を提供しているのか、さらにはその「幸福」を提供するためにキャスト同士が協力しあっているのかがわかると思う。自分が所属している部署や責任範囲から行動するのではなく、お客様に「幸福」を提供するためであればその垣根を超えて努力する。また、「自分の責任範囲」と言う言葉すら考えはしない。

P172
清掃の巡回記録は貼らない
ディズニーは決して責任転嫁をしない

この章では、私が疑問に感じていたトイレに掲載されている「清掃記録表」に苦言を呈している内容になる。私自身もあれはなぜ貼られているのかが本当に理解できず、時間を見ると清掃直後にも関わらず「掃除したのか?」と思うことが多々ある。

あの表は、

  • 一日にこれだけの回数清掃してますよ
  • これだけの箇所を清掃、点検してますよ
  • 清掃はこの人がしたので、汚れているのはこの人が手を抜いたからです。会社の責任はありません。

ということをアピールしているようにしか感じられなかったが、まさにこの点について指摘されている。

巡回記録を取る必要があるのであれば清掃スタッフが携帯して事務所に持ち帰った方が管理しやすいはずだし、トイレの前に堂々と、しかも客が見やすい箇所に貼られている。その管理方法を決定した方には是非ともこの章を読んで考え方を改めていただきたい。

P204
サービスというものは、いまも次の瞬間も明日も違ったお客様がいらっしゃるわけですから、極力同じクオリティーを提供しなければならないはずです。しかし、このお店の店長は、あと1時間でルーティーンの清掃をするのだから、それまで待てばよいと思っているのです。とんでもない話です。今いるお客様が汚いと思えば、汚いのです。

すばらしい。この一言。本当にこの言葉の通りで、8時間の営業時間に4回掃除をして清掃には気を使っていたとしても、その間に汚れてしまえばその時に来たお客様からすれば「汚れている」という印象になってしまう。だからこそ、マニュアルではなく常にスタッフが清掃に気を付けなければならない。


多々感動する点があった。本当に「感動」した。


ちなみに、本はだいたい近所の喫茶店で読むようにしているのだが、その喫茶店のトイレが清潔とはとても思えない。店内の写真であるため名前は伏せておくが、某全国チェーンの喫茶店の今現在のトイレの写真。多分新聞の内容から日付も判断できるかと思う。

トイレがこのような状態であると、飲食品の管理などもずさんにされているように感じてしまう。(今日は比較的綺麗)

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ディズニーの魔法のおそうじ (小学館101新書)

ディズニーの魔法のおそうじ (小学館101新書)