検索は、するな。 安田 佳生(著)
最近素晴らしい本ばかり読めていると思っていたが、その考えがそもそも間違っていたのかもしれない。本と言うとは著者の「考え」や「経験」が記されており、それらの本について「面白くない」と思うのは、その著者の考えに共感が持てなかったり、その考えについて理解ができないという事だけなのかもしれない。なので、本を読むにあたって自分が持っている先入観を捨てることができれば、どのような本にでも発見や感動があるのかもしれない。(本当にどうしようもないと思えるような本もあるかと思うが。)
本書はこのようなことを考えさせてくれた本。
- 作者: 安田佳生
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2009/04/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の安田佳生さんの書籍は何冊か持っているが、この著者の本は本書で初めて読んだ。書店でタイトルが気に入って何冊か購入したのだが、その後に著者について調べると株式会社ワイキューブの倒産までの経緯を知り、それがどうも胡散臭いと感じてしまい興味をなくし読まずにいた。
このような理由で購入後に手をつけていなかったのだが、本書はこの著者に興味を持つきっかけとなったタイトルの書籍なので読むことにした。そうすると、この著者の考えの素晴らしさを知れた。
著者の安田佳生さんが代表を務めていた株式会社ワイキューブは2011年に倒産しており、インターネット上にはその倒産に至った経緯が書かれた記事が多々ある。それらの記事が株式会社ワイキューブを非常に胡散臭く感じさせる内容であったため、安田さんに対しても非常に胡散臭く感じてしまい興味をなくしていた。だが、本書を読むことでその胡散臭ささは間違いだという事に気づいた。
むしろ、そのように胡散臭く書かなければ記事が読まれないのではないかと思い書いたであろうライターのことを胡散臭く感じてしまう。それ程に、解散に至る経緯として書かれている「散財」についてはその「散財理由」が書かれておらず、単に会社に対する批判を感じさせることで記事に興味を持たせようとしているようにしか思えない。
この著者の考えとしては本書のプロローグに記載されている。
P1.
人は何かを知りたいときに、すぐにその答えを外に求めようとする。
誰かに聞いたり、本を読んだり、ネットで検索をしたり。
だが、いくら探しても答えは見つからない。
答えは唯一、あなたの頭の中にしか存在しないからだ。
頭の中に答えがある。いや、頭の中にしか答えはない。
これが著者の根底となっている考えかと思う。この文章を読んだだけでは何が言いたいのかわからないかもしれないが、なぜこう考えるのかを本書を使って説明がされている。
この文章から「検索は、するな。」というキャッチーなタイトルが決まったのかと思うが、私がこの書籍のタイトルを決めるとすると、「鍋を見てて」だ。これは本書のP97に書かれている内容で、本書の本質には当てはまらないかもしれないが最も記憶に残った文章になる。
P16.
新しいものを生み出す「アイデア」は「ひらめき」だと思われているが、私はアイデアはひらめきではなく「発見」だと思っている。
アイデアとはゼロから生み出されるものではなく、そこにあるが誰も気づいていないものをちゃんと見つけることだ、ということである。
プロローグの延長としてこのような考えがあり、情報を記憶した所で何の意味もなく、その情報が生み出されるまでの経緯を知り、それらをより深く考えることで新たなアイデアが「ひらめく」のではなく、「発見」されると言うものになる。本当に私もそうだと思えた。
私は学生の頃に、「なぜ勉強をしなければならないのか」という事がわからなかった。わかっていなかったのではなく、わからなかった。教師や他の大人達からは「勉強をしろ」とよく言われたが、なぜ勉強しなければいけないかという事を説明されたことはなく、なぜしなければいけないかわからないものをすることはできないし、それをいいわけにして勉強することもしなかった。
親父にいたっては、「学校の勉強なんて将来何の役にも立たないが学生だから勉強しとけ」と私に言い放った次第だ。親父は自営業の定食屋だったから学校の勉強は本当に役に立たなかったのかもしれない。
ただし、今実際に大人になってみると勉強することの重要性もわかったし、学生の時にしていなかった勉強を今している。この「勉強しておけばよかった」は、私の周りでは大勢が言っていることなので、どのように勉強の重要性を説かれた所で多くの学生は勉強をしないものなのかもしれない。
著者も自分の息子に同じように「なぜ勉強をしなければいけないのか」と質問された際の回答として以下の回答を出した。
P128.
それは、自分の表現したい思いを自分の中で形作り、表現するために必要な思考力を身につけるためだと。
この言葉は深い。学生の頃に言われても意味すらわからなかったかもしれない。さらに、聞く人間によって捉え方が変わるだろうし、「自分の中の表現」が違う分、同じ事を言おうとしても十人十色で変わると思う。だが、この言葉を作り出すために勉強をするという再帰的な意味を持ったとても深い言葉だと感じた。
この言葉も一文章として抜粋したが、この文章が生まれるまでに至った経緯や、その考えが本書には書かれている。
興味を持たれた方は是非とも読んで欲しい。
- 作者: 安田佳生
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私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日
- 作者: 安田佳生(やすだよしお)
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