ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

千円札は拾うな。 安田 佳生(著)

昨日読んだ検索は、するな。もそうだが、この本の著者の安田佳生さんか編集者かコピーライタの誰かはわからないが、このキャッチーなタイトルを考えたのはすごいと思う。「検索は、するな。」「千円札は拾うな。」「下を向いて生きよう。」の3冊は、タイトルから気になり購入をした。

本書も前述と同じく、タイトルの「千円札は拾うな。」と言う内容については"はじめに"でしか触れられていない。触れられていないどころか、その文章の説明すら無い。だが、その考えに至るまでの経緯が本書を使って説明されているという点は前述の書籍のとおりになる。
だが本書にいたっては、タイトルを決めた上で"はじめに"でそのタイトルについて無理に書かれているのではないかと思えるくらい不自然に思えた。

だがそんなことはどうだっていい、本書を読むきっかけになったタイトルだ。本書も読めたことを嬉しく思う。

本書は経営に対する考え方を説かれた書籍になるかと思う。ただし、経営者でなくても部下がいる人間にも向いており、また、部下がいない社員や、求職中の人間に対してもお薦めが出来る。ビジネス書の多くは役職別に心構えや判断基準のようなものを提示されているが、本書はどのような立場の人間でも関係がなく、「働く」人間に対して考えるべき重要な「考え方」が書かれている。

千円札は拾うな。

千円札は拾うな。


他の記事で書いているように、現在私が働いている会社は"会社解散"の準備を進めている。その中で私は「会社解散の為の人員整理」として解雇される。私は一社員として働いている中で社長にはかなりの文句を垂れたと思う。その社長は私から見れば、「計画性」も、「コスト意識」も、「実行力」も、「業務力」も無いと感じていたのだが、この本を読んだことでいかに私もそれらが足りていないのかという事をひしひしと感じた。

ただしこの書籍の内容は、こちらも以前に読んだ君がオヤジになる前にでの堀江貴文さんの仕事に対する考え方とは対極に位置するような内容と感じる。
対極に位置しようがしまいが両方読んで、双方のいいと思うところを考え、それを自分のものにすることが大事だと思う。人の考えを鵜呑みにするのではなく、「自分で考えて行動する」という点に置いては、両著者の考えは一致している。

現在経営している、働いている会社の利益が上がらず、会社の解散を考えている人にも読んで頂ければと思う。私は経営者になったことが無いのでその辛さや大変さは実感していないが、著者は実際に経営者として働いていた方になるので、その考え方は参考になるかと思う。

P23-24.
「一日が二十五時間あれば、一週間が八日あったら」と、毎日を馬車馬のように働いているビジネスマンに、私はこうアドバイスするようにしている。
「残業をやめ、週休3日にしましょう」
ほとんどの人が「ふざけるな!仕事があるから休めないんじゃないか!」と真顔で怒るのだが、それが私が知る中で最も効果の高い優れた解決策だ。

この文章を読んであなたは、怒り出す人か、納得できた人か、どちらになるだろうか? 前者の方が多いように思うが、この言葉の真意は次に述べられている。

P25.
ところが、残業を辞め週休3日にすると、仕事時間は半分に減る。時間が半分に減ると、どんなに頑張った所で仕事はこなしきれなくなる。
これをねらっているのだ。頑張ってどうにもならないとわかると、人はがむしゃらに頑張るのをやめ「頭を使う」ようになる。

1日1時間長くなった所で、出勤日数が1日増えた所で、増加出来る作業量などたかが知れている。その時間で行う作業は単に普段の作業の延長線を人海戦術でこなしているに過ぎない。なのでこの延長における作業で上がる利益もたかが知れている。
だが、「この時間内にこなさなければならない」となれば、しかもそれが現在の半分になるような大きな制限であれば、現在の作業のやり方を根本的に変える必要がある。そうなれば、作業効率を倍以上に出来るように考える必要が出る。このような制限を付けなければ現在の業務方法を改善する案は出てくることがなく、さらに日頃から業務に追われているのであれば、それを「改善する」ということを考えることすらできない。だからこそ、その業務をこなすことをより深く考えることが重要になる。

それを考える機会や時間を与えるというのがこの言葉の意味になる。

こういった意味を考えることも出来ずに怒り出すのであれば、それはそのような思考の余裕、心の余裕すらもなくなっているのかもしれない。本当に考えさせられる内容であった。

この内容についてはさらに進展させ、P28の「優秀な人材には仕事をさせない」にも記載がされている。本当に素晴らしい。その他にも、P42の「売上を伸ばすために顧客を捨てる」や、P81の「まず借金から始めよう」など、その言葉を聞いて考えるべきだと思うことがあるものが多々ある。本書の目次を読んで、それらの意味が理解できるか確認して欲しい。

検索は、するな。の記事にも書いたが、株式会社ワイキューブが倒産に至った経緯の記事は散財をひどく捉える内容のものばかりだが、本書でもその散財の一部の理由が解説されている。

P49-50.
たとえば、わが社のオフィスの地下には社員専用のバーがあり、そこには一台百五十万円のビリヤード台がふたつ置いてある。
「どうしてこんなところにお金をかけるのか」と聞く人のほとんどは、「そんな無駄な経費を使って、どうかしているんじゃないか」と言う顔をしている。
しかし実際には、このビリヤード台を置くことによっていくつもの雑誌や番組に取り上げられ、それだけで元を取れてしまうのだ。社員が楽しんでくれるだけでも十分なのに、広告宣伝費を考えたらこれほど安い投資はない。

このような効果も考えずに批判だけを思いつくのであれば、その記者の思考力も知れたものだと思える。人は自分以外を見下すことで優越感を覚えるので、それを利用して記事を読んでもらうにはそのように批判記事を書く必要があるのかとは思うが・・。

千円札は拾うな。

千円札は拾うな。

下を向いて生きよう。

下を向いて生きよう。

検索は、するな。

検索は、するな。

私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日

私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日