ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

採用の超プロが教えるできる人できない人 安田 佳生(著)

本書は安田佳生さんの著書の中では最初期に含まれる書籍のようで、2003年2月の発行となっておりすでに10年以上前の書籍となっている。「採用の超プロが教えるできる人できない人」「採用の超プロが教える伸ばす社長つぶす社長」「採用の超プロが教える仕事の選び方人生の選び方 (サンマーク文庫)」と三部作のようだが、それらは最近の書籍とは違い、タイトルから読者の的を絞って書かれているもののように感じる。(リンクは文庫版のため出版年違い)

最近安田佳生さんの書籍をまとめて読んでいるが、それは、既に読んだ書籍の中で著者の考えが非常に素晴らしいと思っており、もっと色々な考えを知りたいと思っているからになる。
ただし本書は、既出の「千円札は拾うな。」「下を向いて生きよう。」「下を向いて生きよう。」とは違い、要点としては「会社の人事」に的を絞って書かれている。

書籍名の「採用の超プロが教えるできる人できない人」だけを読めば企業の人事担当者向けのように思えるが、実際に読んでみると、これから企業に面接に向かおうと考えている人の心構えや、現在求職中でどのような仕事につこうかと悩んでいる人の参考にもなるかと思う。とにかく「人事」に関わる人であれば、経営者であろうと、採用担当者であろうと、求職者であろうと参考になるかと思う。

この著者の書籍は、「○○すればいい」というような押し付けがましい内容や究極論ではなく、著者の「考え方」が書かれている。「○○すればいい」と言うようなノウハウを欲しいと思っている人にはこの著者の書籍は向かないと思うが、そのようなノウハウは極一部にしか通用しないし、そのようなノウハウは書籍化された時点ですでに廃れているかもしれない。なので本書のように「考え方」を理解し、その「考え方」を自分で考え、その考えをもってどのような状況にも対応するという事が重要になるかと思う。

採用の超プロが教えるできる人できない人

採用の超プロが教えるできる人できない人


本書で安田佳生さん素晴らしいと思える考えの一つとして以下のようなものがある。

P24-25.
毎年毎年、何十万人もの大学生が企業のドアをたたく。それなのに、わが社には目にとまるほど優秀な入社希望者はやってこない。そう嘆く中小企業の経営者は多い。そして心のどこかで、「できる社員との出会いは運だ」などと考えているのではないだろうか。
とくに年配の経営者は、「雇っている」と言う気持ちが強い。向こうから頭を下げて入社してくれるものと思っている。これでは本当にできる人材など集まるはずがない。
力を入れて採りに行かないと、本当にいい人材は絶対に来ない。私は声を大にしてそう言いたい。

私も求職者側としてこのように考え、「雇って貰う」、「働かせてもらって給料を貰う」と言う考えが10代の頃にあった。そのように考えていたので、会社から「○○をしろ」と言われた時にはそれに素直に応じないといけないと勘違いしていた。

だが三越デパートで働かせて頂いた際にこの考えが間違っているという事に気づいた。確かに企業に雇って貰う以上、雇用契約では「企業に雇ってもらう」となるのだが、企業からするとその考えとは逆に考えるべきなのだ。

その勘違いに気づいたきっかけとなったのは、私が三越デパートのアルバイトの面接に行った時のことになる。詳しい内容は忘れたが面談の中で、「働かせて頂けるのであれば、どのようなことでもやるつもりです。」のように答えた部分があった、そうすると面接担当者は反発するようにこう答えた。

「それは違う。三越からすれば従業員に働いて頂いている。従業員がいなければ三越は無い。」

本当に感動した。目から鱗が落ちるとはこのことかと思うくらいに感動した。そして、三越デパート北浜店が閉店するまでの半年間アルバイトとして働かせていただくことになった。

働かせて頂いている間も面接担当者であった総務部の方には気にかけていただいた。募集は催事場での販売担当と言う事であったが、19歳ながらワイン売り場での売り子として働かせて頂く機会も頂いた。その間にも、その言葉だけではなく三越デパートでは本当にいろいろな考え方を得ることができたし、私もその期待に答えられるように頑張って働くことができた。その間に働くことを苦痛に感じることは一度もなかった。

これは私の経験からだが、このように、会社側としても「働いて頂いている」と言う考え方を持っている企業と、「働かせてやっている」と考えている企業とでは社員のやる気も働き方も全く異なるのではないかと思う。前者であれば、「自分も会社に貢献しなければならない」と考えを持ち会社の利益に貢献していけるようになる。だが後者であれば、「会社に言われたことだけやってればいい」という考えになってしまうかもしれない。

「社員にやる気を起こさせることが大事」とはよく言うが、それは真だと思えた。これは次の内容にも関わる。

P34.
たとえ、言われたことを完璧にこなす優秀な人材が何人いても、仕事を作り出す人がひとりもいないと会社は成長できない。最初は、社長が事業プランを練り、営業のやり方も編み出すだろう。そして、社長が描いたそのプランを忠実に実行できる人間が増えれば、社員数100名程度までは会社を大きくすることが出来るだろう。問題はその先だ。ビジネス自体を作り出せる人間がどれだけいるかにかかっている。

P52.
マクドナルドは、店舗の従業員に、たとえば東大の医学部を卒業しましたという人材を必要としていない。人件費が上がるばかりで、大学で学んだことなど全く反映されないからだ。それこそ「バカではない」普通に人が来てくれて、マニュアル通りにやってくれれば、同じ味のものが出来るというビジネスモデルを持っているのだから。

他にもP81の「焼肉の焼き方ひとつでわかる、これだけのこと」でいかにシミュレーション能力が大事かという事に触れられており、P86の「素直かどうかは、入社後の成長の分かれ道」では、著者の「素直な人材」の考え方と重要性が書かれている。P165の「いい会社とは考える習慣をみにつけている会社」では考え方がいかに大事かが書かれており、P174の「利益を最優先させたら主導権は握れない」では、利益を5割以上取ろうとすると相手に主導権が取られてしまうことが説明されている。このように引用したい項目は多々あるのだが、文章が長くなりすぎるのでそれらは是非実際に読んで実感して欲しい。

最後にもうひとつだけ引用させて頂く。

P100.
仕事が出来る人にはいくつかの共通点があるが、「スピード」という要素は、その中でも特に重要なもののひとつと言えるだろう。「仕事ができる人=仕事が早い人」と置き換えても、言い過ぎではない。逆に、「仕事が遅い」と言われたら、それは「仕事ができない」と言われているに等しい。

これを読んだ方の中には、「仕事が遅いのは丁寧にやっているからだ」や、「仕事が早いのは手を抜いているからだ」と反発する人もいるだろう。だがそれは本当に違う。

仕事が早い人は確かに手を抜いているかもしれない。だがそれは、「手を抜いていいところは手を抜いている」から早いのだ。仕事が早い人は、それらの手を抜いていいところと手を抜いてはいけないところを判断することができ、手を抜いていい所の手を抜くことで手を抜いてはいけないところに時間を回すことでクオリティを高め、さらに仕事も速くこなすことができる。

仕事が遅い人の中には、確かに全てに置いて手を抜かずに作業をしている人もいるかもしれないが、どうでもいいところに手をかけて時間がどんどんかかっているだけなのかもしれない。私が働いていた会社にも、入金報告書をイラストレータで作成していたバカもいた。それでは編集するたびにデザインを整えなければならないし、項目を入れ替えるたびに再計算が必要になり、集計も簡単には行えない。

何が本質として必要で、何を目的としているかを考えればそのような選択にならなかったかと思うのだが、「見た目がいい方がいい」という事を前提に考えてしまったためにそのような選択になったのかと思う。なので、入金報告書の作成に毎回2時間以上かけて「仕事が遅く」なっていた。

これは極端な例になるが、「仕事が遅い」とはこのような考え方の間違いに起因するものになるかと思う。また、「仕事が遅い人」は段取りも悪いがゆえに効率が悪く遅くなっている。

採用の超プロが教えるできる人できない人 (サンマーク文庫)

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採用の超プロが教える仕事の選び方人生の選び方 (サンマーク文庫)

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私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日

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