ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

OSSやFSの翻訳について思うこと

OSC福岡2013に参加してきた」で書いた通り、昨日にOSC福岡に参加してきた。そして丁度タイムリーなセミナーにも参加してきた。

オープンソースソフトウェアの翻訳をやらないか

PythonのBottleとPeeweeの日本語訳」にも書いた通り、現在BottleとPeeweeのドキュメントの翻訳を考えている。セミナーの対象者は「デスクトップアプリケーションなどの翻訳に関心のある方」となっているが、とにかく翻訳作業についての話が聞けるのかと思い参加。

英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル

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セミナーの内容としては翻訳時の注意や貢献方法、過去の失敗事例や現在起こっている問題と言うものになったが興味深かった。

だが私はデスクトップアプリケーションの翻訳には少々懐疑的になる。ドキュメントやマニュアルは日本語訳することで、ユーザの理解向上に貢献できるかと思う。だが、UIの翻訳に関しては少々悩むところがある。

私はUbuntuLinux 12.04を使っているが、インストール時のインターフェイスは英語を選択している。理由は単純。英語の方が格段に使いやすい。


どうしてもプログラムは英語を前提に書かれていることが多い、現在はインターナショナライゼーションやローカライゼーションで多言語環境で利用できるようにベースが対応しているが、「対応」しているだけでそれらは「英語」を前提に作られていることが多い。
そもそもコンピュータという言葉自体が英語であるし、コンピュータ周辺の用語は大半が英語をカタカナに直しただけのものになる。しかもそれが「大半」なのが質が悪い、関連用語でもカタカナに直しただけのものもあれば、日本語訳してしまっているものもある。これがまたわかりづらい。

例えば「コピー」と「切り取り」と「貼り付け(ペースト)」。コピーは「複製」や「複写」と言う方を見たことがないが、「貼り付け」は「コピペ」のように「ペースト」と言う人もいる。「切り取り」を「カット」と言う人はあまりみない。

この問題は例えばアプリケーションを翻訳するときに問題になる。「翻訳マニュアル」の様な指針があり、それを翻訳者全員が共有しているのであればいいが、そのようなマニュアルはなく、翻訳者単位や翻訳プロジェクト単位、コミュニティ単位で共有されているのが限界になる。
なので、アプリケーション単位で翻訳結果が異なってしまっている。
これであれば複数のアプリケーションを使うユーザは混乱してしまう。「貼り付け」の様な一般的な単語でこの結果であれば、あまり一般的でない単語であれば翻訳はほとんど統一されていない。

こういった中途半端な翻訳や統一されていない翻訳は混乱のもとになるかと思っている。


次に、字面を日本語訳してもショートカットは英語をベースにしている。例えば「C-c」は「Copy」の「C」だし、「C-s」は「Save」の「S」、「C-f」は「Find」の「F」だし、「C-r」は「Replace」の「R」。このように翻訳前の単語がショートカットになっている。「Replace」がわかってなければ、「置換」を「R」として考えるのは難しいと思う。

これは逆に翻訳することでショートカットが覚えづらく、ショートカットと機能の一致がつかなくなると思う。


最後は大きな問題になる。私はこの機能のために英語のUIを利用している。

例えば私が利用しているUbuntuLinuxのUnityではHUD(Heads Up Display)という機能があるのだが、これはアプリケーションのメニューをキーボードで操作する機能になる。
利用したことがない方にはわかりづらいかもしれないが、HUDに「fi」と入力すると「Find」等「fi」が含まれるメニューがフィルタされる。そこからメニューを選ぶことができるし、メニューをフィルタすることでアプリケーションのメニューを確認することが出来る。
例えば初めて利用した画像編集ソフトを考えると、「画像のリサイズ」がメニューのどこから操作できるかわからないかもしれない。そうすると、HUDに「resize」と打てばメニューがフィルタされメニューがどこにあろうとその機能を使うことが出来るようになる。

だがこれが日本語になると非常に問題になる。まず、メニューが日本語であればHUDのフィルタも日本語で入力しなければならない。日本語入力に切り替える手間もかかるし、漢字のメニューは漢字変換をする手間もかかる。
そして問題として「Resize」の翻訳が、「リサイズ」なのか「拡大・縮小」なのかわからない。一度使ったアプリケーションなら覚えているかもしれないが、初めて利用するアプリケーションなら自分でメニューを調べなければならない。英語ならほぼ例外なく「Resize」となっているものが、翻訳することで統一性を欠く結果になってしまっている。


これらが不便が故に私は日本語のUIを使わない。また、これらの理由もあり私はUIを英語で使うことを勧めている。

決してアプリケーションの翻訳が悪いことではなく、現在はこのような統一性が無いことが日本語UI普及の足枷になっているかと思う。これは翻訳プロジェクト間やコミュニティ間で単語や翻訳方法を共通化することで大部分が解決できるかもしれない。

私もドキュメントの翻訳を進めているので、そのことについて考えながら翻訳をしていきたい。そして、「翻訳する」という記事に書いた数万円ほどの費用も、それらの査読を行なってもらおうと考えていたからになる。強力頂ける方は支援して欲しい。


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翻訳夜話 (文春新書)

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記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集

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