ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

Sencha Touch2 実践開発ガイド 中村 久司(著),小堤 一弘(監修)

最近にSencha Touchの勉強を始めているので購入。日本語のSencha Touchの書籍は4冊しか出ておらず、本書はその中では最もハイレベルな書籍になるかと思う。

まず注意点としては本書は「実践開発ガイド」となっているものの決して「開発」向けの書籍ではなく、リファレンスに近い書籍になる。アリエルが出している書籍が入門書、Canonが出している書籍が実践ガイド、IOブックスは平常の論外として、本書が先の通りリファレンスになる。(すべて記事末にリンクを貼っておく)

本書はExt.jsのメソッドの使い方やその機能についての解説が順々に進められているのみで、実際にサンプルとして動作するアプリケーションはない。要所要所では簡単なサンプルはあるもののそれらは「参考コード」程度のものになる。サンプルがその程度であり、内容がメソッドのリファレンスになるため本書を読んだところでアプリケーションを作り始めることはできないので注意が必要である。また、リファレンスとしても「使い方」の簡単な説明と参考コードがあるのみなので「リファレンス的」な使い方をする書籍であるとしか言えない。

だが、先の入門書を読んだとしても「Sencha Touch」としてのコードの意味がわからず進められていくことになるので、その入門書を読んだあとに、それぞれのメソッドの詳細な説明として本書を読むと理解を深めることができる。私もそのような読み方をしたため本書のおかげでSench Touchへの理解が深まったと感じている。

「Sencha Touchを日本語で学びたい」と考えている方は「HTML5モバイルアプリケーションフレームワーク Sencha Touchパーフェクトガイド」「Sencha Touch2 実践開発ガイド」「Sencha TouchでつくるHTML5モバイルアプリ」という順番で読むといいかと思う。

まずパーフェクトガイドでSencha Touchはどういうものか、どういうコードで何が実現できるかということを知り、本書でそれらのコードの意味や使い方を理解する。そしてSencha Touchで作る…で便利で実践的な開発方法を知る。という方法がスマートかと考える。

Sencha Touch2 実践開発ガイド (Parade books)

Sencha Touch2 実践開発ガイド (Parade books)


ここまでにも書いたし、これ以降も本書の悪い点を指摘することになるが、決して本書はいわゆる「悪書」と言うものではない。実際にSencha Touchを使い開発をし、Sencha Touchの代理店をしている株式会社ゼノフィが書かれた書籍ということで、私があまりにも期待しすぎていたのかもしれない。

そして、日本でのSencha Touchの普及を期待して本書の気になった点を書きたいと思う。本当に悪い本ではないのでSenchTouchの勉強をしている方にはぜひともおすすめしたい。本書は国内最高の書籍になると私は感じている。


悪い点として最大に気になったのは、本書が誰に向けて書かれているのかわからないという点になる。序盤ではHTMLやJavascriptの簡単な説明をしているが、本書はまずJavascriptやHTMLを理解していないと理解でない書籍になる。どうあがいてもJavascriptを理解していないとコードは書けない。序盤では簡単な説明があるものの途中から例えばthisについての説明もない。それほどに本書は「Javascriptの知識」を前提としているのだから、それを前提にすべての内容を書けばいいのにと残念に思えた。

序盤にあるシミュレータなどの各々の説明も必要はない。その知識がない方が本書を手に取るとは到底思えないし、VimやSublimeTextをエディタとして紹介しているが本書の著者はMacユーザなのか説明が非常に偏っている。もし「多数のユーザ環境」を前提にしたいのであれば、MacではなくWindowsを前提にすべきで、Windowsで開発を行えるAndroidシミュレータを前提にすべきである。

デバッグ章に関しては特にMacに偏りを感じた。私のようなGNU/Linuxユーザは対象にしないのはわかるが、Macを前提にするというのも「Sencha Touch」の普及を考えるのであればどうかと思った内容になる。これはMac嫌いの私というバイアスがかかっているかもしれないが少し理解に苦しむ内容となった。


他にも気になった点はもろもろとあるのだが、「読者」として困ったのは、著者が本をほとんど読まないのか、それとも編集がうまくできていないのかはわからないが、索引が全く役に立たない。何かのツールをそのまま使ったのか、単語検索からページを全て抽出したのかはわからないが、索引に乗っている単語が掲載されているページが全て抽出されているのではないかと思える量のページ数が参照されている。

イベントなどの単語であれば参照ページが数十あり、「イベント」の意味を知りたいと思った時はそれら全てのページから「イベントの説明」がされているページを探さなければならない。索引とはそのように「主に記載されている」ページを参照するためのものなので「単語の記載」があるページを網羅する必要はないし網羅してほしくもない。

本書はPDF版も販売されているため、もし単語を全て検索したければ端からPDF版を購入するはずだ。私は今まで数千冊の書籍を読んできたがこのような書籍には出会ったことがなく驚いてしまった。


最後に「悪」だと感じたのは、著者の趣味なのか会社としての趣味なのかはわからないが、各章の扉にある絵が何を意図したいのかがわからない。アニメ調の絵で、それほどうまい絵ではないので著者か協力者が書いたのかとは思うが、書籍の内容とも関係なく唐突にこの絵が現れる。1ページ目にはこの絵のために光沢紙が使われているためこの絵のために書籍の原価もコストアップしてしまっている。

これは著者や出版社の意向なので私がとやかく言うものではないが、もしこの「アニメ絵」を押し出したいのであれば表紙にも記載すべきではなかっただろうか。表紙は真面目風にゼノフィのロゴのような柄にしているにも関わらず、中を開くとこの絵がところどころに挿入されている。これには開いてから驚き、事務所などで読んでいると「あの人は何を読んでいるんだ」と思われても仕方がない。


いや、決して内容は悪い本ではない。本書は今後も何度も開き参照する書籍になるかと思う。その分にこういった点が気になったということだ。

HTML5モバイルアプリケーションフレームワーク Sencha Touchパーフェクトガイド

HTML5モバイルアプリケーションフレームワーク Sencha Touchパーフェクトガイド

Sencha Touch2 実践開発ガイド (Parade books)

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Sencha TouchでつくるHTML5モバイルアプリ (Smart Mobile Developer)

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