ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

素人

TVでよく芸人が「素人のくせに」や「素人さん」と言うのを耳にする。これほど違和感を感じることはない。

芸人は自分のことを何様だと思っているのか。芸人が崇高な職業とでも思い上がっているのであろうか。


芸人からすると芸人以外は芸に関しては素人だ。もちろん評論家や自主的に芸について調べ詳しい人もいるだろう。だが大半の方は芸については知識を有していない。これは事実だ。だがそれと同じように、私からすると世間の人間はプログラミングやコンピュータについて素人であり、機械加工についても同じだ。


TVで芸の素人が話すのを「素人がでしゃばるな」と言うのであれば、その芸人がパソコンを買いに行った時に、色や性能について店員に注文したところで「素人が偉そうに言うな」と言われてもそれをすんなり理解するのであろうか。車を買いに行った際にボディの見た目で選んでるのを「素人が偉そうに見るな」と聞いていられるのだろうか。

きっと理解する人は居ないであろう。私が芸人に感じる違和感のように同じく違和感を感じるか、逆上し怒り出すのが大半であろう。


これはテレビというメディアの都合上、面白おかしくするための演出かもしれないというのは理解している。だが、それを「演出」ではなく「本気」で言っているのではないかと思えるのも何度も見てきた。

それは松本人志がテレビで「素人には面白さがわからない」と言っていたことになる。

違和感どころか意味がわからない。あなた方は誰を対象に仕事をしているのか。芸人を対象にした講座の講師であればまだしも、松本人志の言うところの「素人」を視聴者とするテレビ番組上での発言だ。あなたはそのテレビ番組の構成員の一人でしかない。

その番組では視聴者にわかる面白みを出さなければ意味がないのではないだろうか。そのテレビ番組は芸人向けに制作し放送されているのか。スポンサーは番組の視聴率が上がることを期待しTV局に金を出し、テレビ局はそれに答えるために番組を作り放送する。その放送の面白みを判断するのは松本人志の言うところの素人だ。その素人が面白いと思えば視聴率が上がり、逆もしかり。

よって、芸人の仕事は素人を楽しませることだ。素人にわからないという面白いことをしてなんの意味があるのか。

テレビ番組以外でもライブ活動なんかは顕著だ。素人が直接金を払いライブを視聴する。放送局の垣根はなく、直接的に素人を楽しませる必要がある。芸人にしかわからない芸人を対象にしたライブであれば一般販売をしなければいいだけだ。だが私が知る限りそのようなライブはなく、大多数の芸人は一般販売をし、素人から金を取りライブを行っている。

この乖離はなにか、芸人が自分自身の職業を「特別」や、「上辺の仕事」と勘違いし思い上がっていることが原因ではないだろうか。


そして、まだ松本人志がこの言葉を発するのはわからないでもない。今現在も芸人として売れている上辺の人だ。まだまだ高みを目指すために今現在は受け入れられない笑いを探し求めているのかもしれない。どのような職業にあっても「新しいものは受け入れられない」というのは必然だ。

だがそれを「素人にはわからない」と壁を作ってしまっては受け入れられることはない。「素人がでしゃばるな」と追い払うこともない。


そしてさらに驚いたことがある。平成ノブシコブシの吉村崇と言う芸人が松本人志の真似をしているのかはわからないが、同じような言葉を発していた。同じような言葉どころかもっとひどい。思い上がり過ぎて勘違いのレベルを逸脱している。

一般人(素人)が芸人に対して感じていることを言うようなコーナーで、一般人が吉村崇のことを「おもしろくない」、「普通のことを大きい声で言っているだけ」と指摘した。それを聞いた途端に吉村崇が怒りだした。

他の芸人からも「それは楽屋でフットの後藤さんにも言われてた」と指摘されると、「芸人に言われるのはいいですよ。一般の方に言われるのは違う。」と言い出し、その一般人の足を蹴り暴力を振るいだした。


思い上がることも甚だしい。あなたは誰を対象にしているのかと。あなたのお客さんは確かにテレビ局だ。番組制作会社だ。だがその制作局が望んでいるのは視聴者を楽しませることだ。その対象から指摘されることがあれば喜んで聞くべきではないのか。料理人が客から「料理がおいしくない」と言われて暴力をふるうのか。意見を聞いて料理を改良するのではないのか。

もし芸人を笑わしたいと思うのであれば芸人である必要はない。テレビに出る必要すら無い。あなたは何を目指して芸人になったのか。


こういう芸人の行動を見て、自分は仕事で同じことを絶対にしないようにしようと思う毎日だ。

プロ論。

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