ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

科学は不確かだ! リチャード・P. ファインマン (著), 大貫 昌子 (翻訳)

久しぶりに読むリチャードファイマンの書籍。ファインマンの書籍は読む度に「頭がいい人」というものに驚かされる。本書はファインマンの講演を書籍化したものだが、よくもまぁこのような内容を講演で話すことが出来るなという物に成る。書籍としてもファインマンを超えるような内容はなかなかないし、ましてや講演でここまで全体的に捉え、それをつなげていくという会話が出来る人間は中々居ないだろう。

本書はタイトルからは「科学者が何を言う」と思われるかも知れないが、そのぶっちぎりの優れた科学者であるファインマンが「科学の不確かさ」、「価値の不確かさ」、「この非科学的時代」と言う点について考えを語った貴重な内容に成る。

科学は不確かだ! (岩波現代文庫)

科学は不確かだ! (岩波現代文庫)


ファインマンと聞くと原爆の開発と言う悪いイメージがあるかもしれないが、これにもきちんとした理由が有る。これもファインマンの著書を読めばわかると思うし、更には原爆は別に悪ではない。原爆を悪とするのは、刃物は人を傷つける可能性があるからと包丁やハサミ自体を、そしてその製造業者を敵視するのと同じだ。どのようなモノでもそれを使う人間次第でしか無い。刃物がなければ身の回りにあるどんなものも作ることが出来ない。

例えば八木アンテナにしても、その技術は戦争で殺戮のために使われ、更に原爆での爆発領域の測定にも使われている。だが近代ではそれはテレビアンテナ(VHF)として使われ多くの人がその技術の恩恵を得ていただろう。この例からも結局は技術自体は悪になりえず、どのような技術でも使う人間によって悪にすることができるのだ。

本書は非常に幅広く深い内容と成るため具体的な内容や感想を書くことは出来ないが、技術的な話はあまりなく、多くの人が読み物として面白く読めるかと思う。ファイマンの書籍では「ご冗談でしょう、ファインマンさん」が有名に成るかと思うが、本書はファイマンの人柄ではなく、ファイマンがどのように考えているかという点について知ることが出来る。

もちろん「ご冗談でしょう、ファインマンさん」を読むとファインマンの奇行とも言える様な行動からファインマンの人柄が知れるだろう。ファインマンの書籍を読めば、現代人がどれほど「常識」に縛られているかがよくわかると思う。

ファインマン物理学〈1〉力学

ファインマン物理学〈1〉力学

ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動

ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動

ファインマン物理学〈5〉量子力学

ファインマン物理学〈5〉量子力学