ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 田沼 靖一(著)

面白い。全体的にはアポトーシスの話になる。

アポトーシスとは言葉を聞いたことがある方も多いと思うが、簡単に言えば細胞の自殺だ。自分の寿命を決めて自殺していく。司令塔の指示のまま自殺していく。

本書にはそれがなぜ必要で、アポトーシスがおこらないとどういう問題があるのかということが書かれている。医療知識がない方でもおおよそ読むことが出来るだろう。

帯には「人間が、最大120歳までしか生きられない科学的理由」とあるが、それについて興味を持っても本書を読めばわかる。

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)


「癌」も病気としてその名前は知っていても、具体的にそれがどういうものか理解している人は少ないだろう。本書の内容は現在の医学により説に過ぎないが、癌はアポトーシスを忘れた細胞の問題であるという事が書かれている。アポトーシスが何らかの理由でおこらなかった故、細胞が死なず、それが増殖してしまう。これによって細胞の異常増殖となり癌化するのだ。

また、「死なない」とはどういうことか疑問に思われるかも知れないが、生物にはそもそも「死」はなかった。だが進化の過程で進化を進めていくために引き換えに得た行為が「死」となる。遅れた進化のものが生きながらえてはその遅れたものが新たな交配を生むために死ぬ必要がある、死とは進化が進化を生むための行為なのだ。

アメーバは細胞分裂を繰り返し自分自身を増殖させるために死はない。環境変化による細胞の崩壊による死は存在するが寿命というものは存在しないのだ。

本書はこういった「死」についても考えさせてくれる書籍と成るだろう。

内容も非常に面白く話しの展開もわかりやすい。読み物としても中々いけるだろう。

細胞の分子生物学 第6版 第18章 細胞死 細胞の分子生物学 第6版

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