ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

論理思考力トレーニング法―気がつかなかった数字の罠 マリリン ヴォス・サヴァント(著), 東方 雅美(翻訳)

以前に「数学的発想」と言う記事を書いたが、それはモンティ・ホール問題として世に広く知れ渡っているようだ。

今となってはその記事の問題をどのようにして思いついたのか、過去に問題を見たことがあってそれがベースとなっているかはわからないが、その問題は大学院でまで数学を学んだ方や、そもそものその大学教師、果ては数学者までをも惑わしたという。

とにかく直感的、数学的ではない問題のようで、サヴァントがその問題を記事にした時にはそれら各方面からの批判的な手紙でサヴァントの回答が間違いであるというクレームが届いたようだ。

なのでもしかすると先の記事の問題を解けない、理解できなかったとしてもそれが当然なのかも知れない。だがそれは「考えればわかる」問題でもあるので、あなたがいかに考えていないかという証明にもなる。

論理思考力トレーニング法―気がつかなかった数字の罠

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史上最大の難問が解けた!―ミズIQの「フェルマー最終定理の証明」事件簿

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まぁこれは先に「考える力をつける数学の本」の感想に書いたことに当てはまるだろう。

大学生や大学院生なんかにしても、ファインマンの書籍にも書かれているように「暗記」や「それがある」ということだけ知らされ、それを覚えているだけで、それを実生活の中で使えない、それを使う場になってもそれを当てはめることが出来ない、ということになりかねない。

どれだけ高度の数式を覚えていたとしても、それを実生活の中で当てはめることができる事が重要なのだ。百人一首を暗記していることになど何の意味もなく、その内容を理解し、それに風情を感じ、普段の生活の中にも見出すことに意味があるということは誰にもわかるだろう。百人一首を暗記したところで競技以外のなんの役にも経たない。

大学院での数学教育や、数学者の考え方というのは私にはわからないが、これもそもそもに「暗記」や「先入観」を大いに持っているからこそその「本質的な数」について考えられないのかも知れない。先の問題の「確率」というのも、その場面場面で考えてしまい「前提となる条件」が問題として「国語」に依存しているためそれが理解できないのかも知れない。

これらはあくまでも予想でしかないが、自分で計算もせずにわざわざサヴァントにクレームの手紙を書いて中傷までするくらいなのだから、自分の知識に絶対的な自信が有り、その実証をしようとしない凝り固まった頭の人間どもであるということは単純にわかるだろう。私も先の記事で行ったが、手作業のシミュレーションでも100回は出来るだろうし、コンピュータシミュレーションを使えば数百万回だろうと数億回だろうと簡単に出来る。それをせずにクレームの手紙を書く時間に当てるなどアホらしい。

本書ではそのような凝り固まった頭の人間には理解できないものばかりになるだろう。私は第一章以外は飛ばし読みとしてしまったが、それでも非常に面白かった。



例えば次の問題などあまりにも簡単なことであるが、これも先入観と思い込みで凝り固まった人間には解けないだろう。ぜひあなたも挑戦してほしい。もちろん私は解くことが出来たが、解説をみると世の中の人間がいかに「数学」と言うものを盲信しているかということを理解できた。なぜそんな難しいことを考えるのかと疑問にすら持ってしまう。

P35.

1周1マイルのレース場が有ります。時速30マイルで1周目を走ったあと、2周平均で60マイルにするには、2周めを時速何キロで走ればいいですか?

ぜひ考えてといてほしい。あえて答えは書いておかない。もし挑戦して答えがわかった方はコメントでもして欲しい。誤っていれば間違いであることを指摘しよう。もちろんその回答とその理由が必要であることは言うまでもない。理由は計算式でも構わない。



サヴァントの書籍を初めて読んだが、問題を解く人間としてサヴァントが頭がいいというよりも、それを解説する能力に凄みを感じた。本当に頭が良い人間というのはきちんとそれを解説できるものだ。

もちろんサヴァントは世界一のIQの持ち主としてギネスブックに掲載されているほどであるから数学的思考ももっているのであろうが、どうも私はその説明能力の方に惹かれた。



これらの問題が理解できない方は是非とも本書を読んで欲しい。