ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

赤字なら受託しないほうがいいのか

稀に小さな会社の経営者と話すことが有る。まぁプログラマをやっていればそういった繋がりが増えていく。

だが、そういった人たちはどうも「経営」と言うものを勘違いしているのではないかと思う。

私の周りの人間はプログラマが独立してたまたまうまく言っているような人たちなので、まだまだ「経営」というものが理解できていないのかも知れないが、そのたびに同じことを話すので記事にしておくことにする。

 

 

経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目

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授業力&学級経営力 2015年 06月号

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よく有る誤解はタイトルに有る「赤字となる業務は受託しないほうが良いのか」ということ。

確かに赤字になる業務を進んで受ける必要はない。確かにその業務を受けることで、その後の業務を連続で受けることが出来る場合や、その後のサポート契約で黒字化出来るものなどは進んで取っていくが、それはそもそも「赤字となる業務」ではない。

この記事での「赤字となる業務」とは、その仕事は絶対的に赤字となる業務であるとしよう。そして、それを受託することで「経験」や「新人教育」などと言った付加価値を得ることもなく、単純に赤字となる業務だ。

 

あなたならそんな仕事を受託するだろうか。受託するべきではないというのは一般論だろう。

だがもちろん、それを受託するべき時も有る。その判断が出来るだろうか。これが経営判断と言うものだろう。

 

以前にも書いたが、私は数億円の利益になる業務を断ったことが有る。それも経営判断だ。先の赤字の業務を受けるかどうかの判断が出来ない人は、これを断るという判断も出来ないのではないだろうか。

コレの理由は単純で、その業務を受けるには業務の拡大が必要になる。人員も倍以上に増やさなければならないし、その人員を受け入れるには事務所の拡大が必要になり事務所の移転や新たな機材の調達が必要になりコストがかかる。

そしてそれが単発注文故に、その業務が終われば、その拡大した人員を抱えて業務を続けることになる。数億円とは大きいように感じるかも知れないが、一人を雇うのに年間600万円かかるとして20人雇えばそれだけで1億を超える。数億円の利益など人件費で考えるとその程度しか無いのだ。

確かに最近では人材派遣などで単発的に人を雇えるが、それをすれば既存のスタッフが疲弊するだろう。そして、その業務を行っている期間は既存の業務を行うことが出来ず、その業務が終了してからも既存業務を新たに受注するのは難しくなる。

 

赤字の業務を受けるかどうかの判断と同じように、黒字の業務を受けるかどうかの判断は難しい。

「黒字なら受ければ良い、赤字なら受けなければ良い。」というのは、「売れているものを売る」と言うのと同じくらい危ない考えだ。コレは別の記事にする。

 

さて先の赤字の業務受注に関しても同じように簡単に説明しよう。

これも私の経験談から例示するが、その当時は測量系の業務をしていた。測量というのは道路工事と同じように年間に平均して存在するのではなく、一定の時期に集中して仕事が有る。理由は察してほしい。

なのでどうしても1年の間に暇な時期というものが出来る。通常はその時期に別の業務を行ったりするのだが、その年はその業務をすることが出来ずにいた。なので現場スタッフは年末に行う棚卸しや基材の整備などを行っていのただが、一ヶ月もそれをさせるわけにはいかない。

なので赤字だろうと仕事を探すしか無い。「探すしか無い」ではなく、「探したほうが良い」。赤字だろうとなんだろうと、仕事があれば売上が上がる。その売上から給料を支払って赤字があれば仕方ながないことだ。

仕事がなければ現場スタッフに支払う給料は100%会社持ちになるが、赤字でも仕事を受ければその売上から支払うことが出来る。総合的に考えて9割の給与しか売上から支払うことが出来なかったとしても、その場合でも会社は1割の給与の持ち出しで済む。

そして何より、現場スタッフも仕事を行うことが出来る。倉庫の整理や待機というストレスの貯まることをしなくても済むし、きちんと説明しておけば会社に不信感が貯まることもない。そして何より、それを理解していればコストの削減などを現場の人間が考えてくれる。

 

このように黒字、赤字と単純に考えることが出来ないのが経営だ。

プログラマが自営を始めた多くの場合こういったことが考えられないのではないだろうか。