ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

図解 スティーブ・ジョブズ 神の仕事術

すっげ。ジョブズが神格化されている。

LC630や、パフォーマの時代を知っている人間からすればジョブズ時代のMacは優れているかと思うが、それはその世代の平均より少し上というだけで、特段優れているわけではない。

特に、本書はでiTunesジョブズの最高傑作とされているが、世間からすればあれは最大の失敗作であることは周知の事実で、実際に、CatalinaからiTunesが分解されたのでも、Appleとしても失敗であることを認めている。

本書でいう最高傑作が世間からすれば大失敗作なのであるから、本書は見当違いであるということもわかりやすいが、内容とすれば全体的に面白く読むことができた。

[図解] スティーブ・ジョブズ 神の仕事術

[図解] スティーブ・ジョブズ 神の仕事術



ここまでの通り、神の仕事としているのも全く当てにならないのはわかるかと思うが、ジョブスはその仕事と引き換えに、神どころか世間に多くの迷惑をかけている。

例えばジョブズは日本で言うところの駐車場の車椅子マークのコーナー、身体障害者コーナーに堂々と車を止めていたと言う。理由としては、そんなルール従わないと言う単純なもの。交通ルールも守らないのでしょっちゅうつかまっているし、そんな人間の行動が素晴らしいと言われても真似すべきことではない。
その結果、素晴らしい仕事ができたとしても、交通放棄を守らなければ人を殺してしまう可能性がある。それを神の仕事術と崇めること自体が異常ではないだろうか。
交通事故で殺したとしても、神が祝福をくれるのだろうか。

だが、ジョブズはそれほど、神格化してしまうほど、信者と呼ばれる人間を作り出してしまうほど、熱心なユーザを作っているのも確かだ。本書の著者もその信者と呼ばれる人間であろうことはすぐにわかるが、信者と呼ばれるからには、それはカールポパー反証可能性からも科学ではなく宗教であり、宗教は何を言ってもその考えが変わらないから宗教たりえる。
なので、どれだけジョブズの仕事術が間違っていると証明したところで考えがわからないのであるから、本書の神の仕事術というのも当てにならない。

と、本書の考え方にケチをつけるのもこの辺にして、冒頭に書いた通り、面白く読むことはできた。

見た目に拘らなかったというジョブズがその考えを改める一言としてマイクマークラに言われた一言「君は表紙を見て、本を買うべきか否かを判断するだろう」。
素晴らしい。確かにそうだ。
人の服装や髪型にしても、外見は人の一番外側の内面というが、まさにその通りだ。その服を選ぶのも自分の内面なのであるから、ボロボロの洗濯していない服を着ていたとすれば、それでいいと判断したその人の内面の現れである。
本にしても、表紙だけで判断して購入することはないという人もいるかもしれないが、表紙(背表紙)で判断して手に取るか判断しているだろう。その手に取るという判断の結果でしか、その本を買うかという判断はされない。ランダムにサイコロを振って、買う本を選んでいる人はいないだろう。

私も服装には気をつけようと考えるようになった。

「データは今の流行を教えるが、未来のヒットは予言しない」、「欲しいオタクが一人いれば、やってみたい人が千人はいる」等、考えさせられる文章も多々あった。ジョブズがそう考えて行動していたのであれば、神とは全く思えないが、発想はすごかったのかと思う。
だがこれも先に引用した通り、全てジョブズが考え発見したのではなく、マイクマークラのように周りの人たちに気づかされ、その行動をした結果ということに他ならないというのは知っておく必要がある。

発想力よりも求心力、そこがスバラシイのかもしれない。

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

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