ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

海外で働くかわいそうな人たち

なぜか世間では海外で働く日本人をエリートで頭の良い人達だと思っている人間がいるようだ。外資企業で働いている人が本社である海外に出るのならまだしも、日本企業の中でも海外支社で働くことがステータスだと思っている人たちがいて哀れに思う。

日本企業に勤めているにも関わらずで海外で働くことなど、結局のところ日本の会社では役に立たないから海外に飛ばされているわけだし、日本人なのに外資の企業で働くことは私はかわいそうに思える。外国人かぶれで外国人に囲まれた生活に憧れているのならまだしも、何が悲しくて自ら望んで外資で働くのだろうか。

私は外資では働いたことはないが、アメリカの企業を買収した経験と、その交渉のためにカリフォルニアとラスベガスに半年間住んだ事がある。だがもうそれはうんざりであるし、その経験を通しても海外で働くことの馬鹿さ加減を経験した。

さあ、海外で働こう

さあ、海外で働こう


もちろんこの「哀れ」とはいわゆる社員レベルの話になる。例えば数万人規模の会社であれば数人の経営陣により会社は運営されているので、その経営陣の誰かが海外支所に行くというようなことは別の話になる。

先にも書いたように、海外支社の代表として現地にとどまることや、交渉のために代表が海外に出ることは仕方がないことだ。だが前者は日本の経営陣がわざわざ出向くのは最初だけでよく、数年もすれば現地のスタッフにその座を譲るべきだ。それができないという事は、結局のところ人を育てることもできない無能であることは間違いない。


まず私はなぜ海外で働くことがかっこいいと思われるのかが全くわからない。先の経験からも海外で働くことはうんざりであるし、自分のスタッフも海外で働かしたいとは思わない。そもそも海外に派遣しようと思うようなスタッフがいるとすれば、それは会社のお荷物だからよそに追い出そうとするか、それとも日本では仕事がないから現地法人との連絡係程度の仕事を与えることが目的にしかならない。


以前の経験にこのようなことがあった。私の会社と関連会社のスタッフを集めてある会議をしようと思っていた時のことだ。

延100人程度で集まって会議をする予定であったが、その内容は日本の技術者に有用であると思い、経営会議以外は講演という形で一般に公開しようと考えた。そして、それであればその技術に関連する人をゲストに招こうと、当時その技術に長けていた某検索君の技術者を呼びたいと、その企業の日本法人の代表に声をかけた。

その日本法人は取引先という事もあり、代表とは何度かお会いしていたので直接代表に話を通すことにした。そうすると、日本企業も協賛するという事で、直接本社と交渉してくれることになった。日本の現地法人にはなるが、もちろんそこそこ大きな会社だ。

だが交渉は難航した。まず、一週間も日本に行かせる暇はないと断られた。まぁその技術者もサラリーマンなのであるから、日頃からその技術で会社に利益をもたらしているのはわかる。その技術者を派遣するにはもちろんそのぶんの利益が出せることを期待できなければ出さないだろう。

もちろん私もただというつもりはなく、その企業の広告展示なども提示し、さらにはうちのスタッフ一人の年収以上の費用を提示している。講演となると数千人集めることができるので、その集まった技術者の宣伝効果も含めるとかなりの利益になるだろう。

だがそれでも断られた。顧客からの講演オファーとしてだけではなく、日本法人からのオファーでもあるにも関わらず断られたのだ。

まぁこれは結局、単純にはそのスタッフは一週間でそれ以上の利益を会社に与えているという事だろ。数千人にその技術を宣伝することや、1000万以上の収入があるだけではそのスタッフ一人を動かすつもりはないということだ。


企業にとって重要なスタッフというのはまさにこういうことだ。例えばその会社の代表が日本に来るときは数十億円規模の仕事があるときのみであろう。私も先に書いた会社の買収はそれくらいの規模の仕事であったから直接に行ったが、数千万円程度の仕事であれば一般のスタッフが日本で対応するので十分になる。


私の知り合いにも外資の某つぶやきのためにアメリカに渡った人間や、某螺旋企業でアメリカに滞在している人がいる。その人達は何故か私に「今アメリカにいるからさ」などと聞いてもいないのにどこにいるか言いたがる。海外で働くのをステータスと感じているから海外にいることを自慢したがるのだろう。

これは海外でなくても、日本国内でも出張だと言ってあちこちに移動しているスタッフが無能であることとも直接関連するだろう。これも経営陣であれば直接の交渉のためにあちこちに行くのはわかるが、一般の社員があちこちに行くのはただの使いっパシリとして扱われているのに他ならない。

東京大阪間でも3時間ほどかかる。その3時間も最近であればPCで仕事はできるが、その業務も書類の作成やメールの返信など非常に限られたものだ。その3時間、往復6時間が無駄になってもいいような社員でなければわざわざ東京に行かしたりなどしない。

どこかに異動させられるという事は、結局のところ自社では役に立たないからその場所に置かれているのだろう。

こんなことを書くとうちのスタッフに怒られるかもしれないが、私はもちろん自社のスタッフを海外に行かせたり、別の支社に移動させたりはしない。現地法人は現地の人間が現地のために仕事をするための法人であるし、日本の支社もその土地土地で責任者がいるわけだから、私や役員が直接交渉する必要がなければ誰も行く必要など無い。


また、海外で働くと給料が多いと思われているようだがこれも大きく違う。これは海外で働くことの信仰があるからこんな勘違いが起きるのだろう。

例えばアメリカのプログラマは日本の求人に比べて倍程度の給与条件であったりするが、州によって違うがアメリカでは所得税として半分近く取られたりするから表面上は多く見えるというだけだ。そう考えると日本と同じくらいのものだ。いや、うちもそうだが、最近はちょっとしたプログラマでも年棒800万〜1000万程度は出すので、アメリカよりも高くなってきている。

この給与は選ばれた能力のあるプログラマだけかと思われるかもしれないがそれはそうだ。アメリカでもそのような給与をもらう人間は選ばれた者たちだ。先の某つぶやきに就職した人間は日本でも大企業の責任者をいくつか経験し能力を上げた上で就職できたわけで、本社の人たちはそれ以上の人たちだ。そいつも結局は日本の事情を知っているからと多少能力が低くても採用されたと想像できる。

このように日本の企業でも十分に給与レベルは高しい、そもそも日本は内需でもボロ儲けができる風土がある国だ。かく言う私も23歳の時までに1億4000万を稼いだ実績があるから年齢などは関係無いだろう。当時はインターネット黎明期であったので仕事はある程度多く合ったが、現在は当時よりも簡単に多くの仕事が見つかる。この記事を見ているパソコン業界でも、スマートフォン業界でもいくらでもやる方法はある。

「海外でなければ稼げない」と言っている人間は結局海外でも稼げないだろう。これだけ内需でまかなえる国で稼げなければ海外で稼げるわけがない。例えばオーストラリアの人口は九州と同程度であるし、ロシアのGDPは韓国よりも低い。日本ほどこの狭い国土で内需に恵まれた国はないのだ。この恵まれた国で稼げない人間に何ができるというのだろうか。


アメリカで会社を起こすと言いだす人間もいるが、なぜアメリカで起こす必要があるのだろうか。ラスベガスのように法人税の安い場所で税金対策をしながら起業したいという馬鹿であればまだしも、シリコンバレーで起業するというようなバカには目も当てられない。

私もサンフランシスコにいた事はあるが、あそこは起業する場所ではなくて投資家を探す場所だ。投資家から衣食住と金を提供してもらって働きたいのであればまだしも、「シリコンバレーで起業する」と言うようなバカはあそこがどういう場所かもわかっていない。少しの間住むだけでも家賃に絶句するだろう。

例えば現在の上場企業を見てもらってもわかるが、わざわざアメリカなんかに行かなくても日本で起業して充分稼ぐことはできる。起業して金が出来ればシリコンバレーに行き、某謎の会社のように現実を知り出戻ってくればいいのだ。

そもそもに起業するためにアメリカに渡った所でどれほどのビザが取れると思っているのだろうか。以前に「ハワイで働きたいからビザを取りたい」と相談に来たバカがいたが、国というものをどのように思っているのだろうか。

国がわからずして社会がわかるわけがないし、社会がわからずして経営がわかるわけがなかろう。


「海外で働く」、「海外で仕事する」、「海外で起業する」。これはバカの三大文句と言ってもいいだろう。

人それぞれ海外で働くことに優越感を抱くのもいいかもしれないが、その優越感は日本で働く人間からすれば馬鹿げた考えであるという現実を知っておいて欲しい。

もしそれほど海外がいい場所であれば、日本の大企業の創業者達がなぜ今も日本で仕事をしているのだろうか。拝金主義と流布される堀江貴文も日本で起業して日本で働いていたし、現在も日本で働いている。

こんな現実も見れない人間たちが哀れで仕方がない。


「日本には魅力的な会社がない」、「魅力的なサービスを展開している会社がない」と言うバカもいるが、なぜお前がその魅力的な会社にしようと、作ろうと、その魅力的なサービスを展開しようとは考えないのであろうか。

それは魅力的な会社、サービスの有無ではなくお前の能力の問題である。自分の能力がなく、自分でできないから人の作ったものにしがみつこうとするのだろう。企業はそれがわかっている。

稀にヘッドハント的な引き抜きで転職をする人間がいる。もちろん我社にもいる。そういった人間は「引き抜きで退職するような人間」として扱われるし、海外で働く日本人も「日本では働けない人間」として扱われるだろう。