ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

突然、僕は殺人犯にされた -ネット中傷被害を受けた10年間 スマイリーキクチ (著)

本書は全てのインターネットユーザに読んで欲しい。全ての2ちゃんねらに読んで欲しい。今この記事を読んでいるあなたに読んで欲しい。

この記事なんかより、このブログなんかよりも本書を読んで欲しい。本書はインターネットの危険性、匿名への警鐘、警察、検察の問題点など、インターネット犯罪の多種多様な面への問題提起になっている。

本書は全インターネットユーザの必読書にしていただきたい。私はインターネットの利用を免許制にすることを望んでいるが、免許制にするのであれば本書を教科書の一部に取り込んで欲しい。それ程に本書はインターネットの怖さ、不確かさ、凶暴性を物語っている。今これを読んでいるあなたもきっと、加害者になったことがあるだろう。

本書には引用したい箇所が相当数あるが、本書を引用することは避けた。本書の一部をかいつまんで紹介することすらスマイリーキクチさんは望んでいないと私は受け止めた。全ての経緯と経過を知り、その結果から、「インターネットを利用する」ということを考えなおして欲しい。インターネットへの書き込みはパソコンに文字を打ち込んでいるのではない、世界にその発言を公開しているのだ。書き込んだパソコンの先にはインターネットがあり、その先には人がいる。

自分の発言に責任を取らなければならない。「みんながそう言っていたから私もそうした」では済まされないのだ。インターネットを憂さ晴らしの道具にしてはならない。


この事件の概要はWikipediaの「スマイリーキクチ中傷被害事件」記事を読んでいただきたい。そして全ての流れを知るために本書を読んでいただきたい。


Twitterで何も考えずにリツイートする、裏付けも取らずにうわさ話を書き込む、嫌いな人への悪口を書き込む。これらすべての行動はあなたを加害者へとしてしまう。「ツイートをリツイートしただけ。それが嘘だとは知らなかった。」、「嘘を始めに書き込んだ奴が悪い」、「○○さんが言っていた。○○さんが悪い」、「悪ふざけのつもりで軽い気持ちでやった」、「そういう噂を立てられる奴が悪い」。これら全てはあなたが悪い。あなたは被害者面をするかもしれないが、あなたは加害者なのだ。決して被害者ではない。

最初にその話を持ちだした人も加害者であることは間違いない。だが、それを広めたあなたも加害者の片棒を担いでいるのだ。何気なしにリツイートボタンを押したかもしれない。リツイートはワンクリックで行える。そのツイートの事実確認をする何百分の一、何千分の一以下の時間で拡散を行える。事実確認は面倒でやらなくても、リツイートは気軽にできるのだ。だが、そのリツートは被害を拡大させている。あなたが何気ないつもりで行った行動も被害者を死に追いやる危険性をはらんでいるのだ。あなたはそれでも面白半分でやるのだろうか。

インターネットではなく、世間話で広めることを考えて欲しい。「○○さんが殺人犯らしい」という話を耳にしたとしても、それを友達、知り合いに気軽に、面白半分に人に伝えるだろうか?人を殺人者扱いするからには相当な確実性がなければしないはずだ。確実性があったとしてもそのような話を自分から拡散させようともしないはずだ。もし面白半分で話したとしても、それを聞いた人からは「殺人の話を面白半分でしてくる人」と一歩引かれる人間となってしまう。しかも、それが虚偽であることがわかったとすれば「無実の人を殺人者扱いする人」という噂が出まわり、世間から白い目で見られるようになるはずだ。
だがインターネットは違う。でっち上げた虚偽の内容でも面白おかしく書くことで英雄視される。その嘘話を間に受け抗議活動を行う人間も英雄視される。それに異議を唱えたいのではなく、楽しみたいがために抗議活動を行う者が出てくる。被害者のことなど考えずにお祭り騒ぎになるのだ。被害者がどれだけ無実の証拠を揃えたとしてもそれがでっち上げだとして聞き入れない。事実が証明されればそれでおしまい。「私は投稿者に騙されたのです。被害者です。」と自分が被害者面をする。

そういったインターネット利用者からすれば、インターネットの世界は現実ではないのだ。仮想世界なのだ。その先に人がいることなど理解していない。理解しようともしてない。


本書を読めばこれら全てについて現実味をもって理解できると思う。あなたが加害者にならないためにも本書を読んで欲しい。本書はあなたが加害者にならないための防衛書なのだ。被害者にならないためではない、加害者にならないための防衛書だ。

あなたが加害者にならないことを私は祈っている。是非とも本書を読んで欲しい。

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