ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

ThinkPadはこうして生まれた 内藤在正(著)

私はThinkPadが好きだ。大好きだ。ThinkPad以外のノートPCに「使いたい」、「これなら使える」というものがないために現在も「ThinkPad X40」を利用し続けている。

あちこちで話したり書いたりしているが、私はLenovoになってから明らかに品質が落ち、低価格量産方針に転化しているとしか考えられなくなった。本書は発売当初から読んでいるが、現在のレノボを見れば本書に書かれていることが真実でないと感じざるを得ない。
本書の後半では「これからのThinkPadは低価格路線にも進出する」と書かれているが、それ以前から、Lenovoとの提携が発表されてからというもの、少なからずその影響が出始め、Lenovoブランドになってからはその「ThinkPadらしからぬThinkPad」が発売されていることに「悲しさ」を感じる。

私は今後にThinkPadを購入することはない。購入するとすれば保守パーツとしてのThinkPadX40であろう。ThikPadX40を使うために現在も年間数万円のコストが掛かっている。キーボードを変え、SSDを変え、バッテリを変え、新しいPCを購入するよりもコストがかかり続けている。


だがそれ程にThinkPadは使う価値がある。使う喜びがある。信頼に値する耐久性がある。

かなしいかなThinkPadはもう存在しない。LenovoはさらにIBMからx86サーバ部門を手に入れる。もう手短なサーバにもLenovoが進出してくる。 ThinkPadなどのLenovo製品の利用を禁じる政府機関の通り、Lenovoバックドアを仕掛けているという報道が多数ある。ハードウェアの信頼性もなくなり、耐久性もなくなり、そしてソフトウェアにさえも細工を始めている。

ThinkPadブランドの信頼性を逆にさえ利用し始めているのだ。本書でどのようなことが書かれていようと、もう既にThinkPadは存在しない。大和研究所すら看板だけになっているのだ。

ThinkPad X40 Info

ThinkPadはこうして生まれた

ThinkPadはこうして生まれた


本書ではThinkPadThinkPadたる所以が多々綴られている。これは過去の話だ。現在の話ではなく思い出話だ。

本書はそのThinkPadと言う「夢」を思い出させてくれる書籍であろう。

ThinkPadがどのような考えから作られ、どのように成長し、どのように終焉を迎えたか。本書にはその歴史が「著者目線」で語られている。著者は「ThinkPadの父」と呼ばれている人物だ。ThinkPadの開発当初から参加し、大和研究所と共にLenovoに移った人物だ。

その成長を見届けてきた人間ゆえ、ThinkPadが亡くなったことを認めたくなかったのであろう。本書ではそれを感じられる。その成長を見、その成長を支えてきたが故、その末路を直視できないのかと思う。


本書はThinkPadが好きで「あった」ユーザや、コンピュータが好きな人間にぜひ読んで欲しい。過去にはThinkPadと言う素晴らしいコンピュータがあったのだ。その存在を思い出して欲しい。知ってほしい。そして、それを後世に伝えて欲しい。


……


ThinkPadの墓前にて。