ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方 山本 敏行(著)

まず率直に言うと、この書籍の内容からは"EC studio"がいい意味での非常識な働き方をしているとはとても思えなかった。私が知る限りでは、どの内容も福利厚生が整えられている会社であれば一般的な項目になるかと思う。それどころか、紹介されている内容のどれもこれもが中途半端に取り入れられていて逆に不便なのではないかと思えたほど。

帯には「こんな会社で働きたい」とあるが、本書を読んだ所で「私」は「こんな会社で働きたい」とは思わなかった。(念の為書いておくと、業務内容が魅力的なものであれば働いてみたいと思うが、この本を読んで「こんな会社で働きたい」とは思わなかったという意味)

Amazonの評価欄では本書は高評価のようだが、私としては内容が支離滅裂でわかりづらく中途半端に感じてしまった。否定的な記事は書かないほうがいいかとも思ったが、肯定も否定も意見は意見なのでブログ記事として書くことにした。今後の読書感想文もそのようにしようと思う。上記の通りAmazonでは高評価なので、私の意見として主に否定的な内容を書いている。

書籍名として「日本でいちばん」とあり書籍内でも本当に100回以上書かれているように思えるが、そのアンケート元は株式会社リンクアンドモチベーションの組織診断というものの調査結果になる様子。私は聞いたことがなかったので少々調べてみたが、アンケート内容や、その日本一となった内容について触れられている解説が見つからなかった。

P93.(画像内)
大企業から中小企業まで年間100社ほどが受けているこの調査。今年3月、EC studioは関西一の称号を手にした。

本書の93ページ目の画像を見ると上の文面があるのだが、全国で年間100の企業にしかアンケートが取られていない上に、その中で関西一。しかもどこかで「上半期」と言う文字列も見たかと思うが、そうなると半年では50社となってしまう。アンケートが取られた100の企業がわからないのでどのような企業がなを連ねているのかがわからないが、リンクアンドモチベーション社のWebサイトを見ると申込み制のアンケートのようで、ランダムにアンケートを取得しているわけではない様子。「社内の問題点を探そうとしている会社」でアンケートに答えられるような規模の会社が主なターゲットになっているかと思う。そうなると「日本で一番」というのはJAROクラスに思えた。

このアンケート結果には非常に興味があるので、アンケートの詳細を知っている方がいればコメントいただけると嬉しいです。

また、この書籍にはいろいろなルールや原則、理念が書かれているが、"EC studio"は1年ほど前に"ChatWorks"と社名を変えたが、この名前変更や規模の変更、提携先の変更など、この書籍に書かれている会社理念に反することを多量にやらかしているように思う。本書の発売から2年も経たないうちにこの変化が起きるというのは、これら全ての考えの根底すら怪しく思えてしまう。

この書籍を読んだ感想とこの書籍が書かれた後の会社の状態を見るとこのような否定的な意見の連続になるが、"EC studio"の実績は中途半端なものの考え方は素晴らしい物が多いので、タイトルを見て気になった方には参考になる部分も多くあるかと思う。

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方


否定的な意見となったサンプルを1点出すと、

P1.
「会社に電話がない! 顧客に会わない! 10連休が年4回! 全社員にアイフォーン(iPhone)を支給している! プレイステーションで取引先とテレビ会議をしている!」

と初ページの冒頭にあるが、書籍の内容を読むとこれら全てについて突っ込みどころが満載となる。

会社に電話がない!

これは顧客サポートを電話にて行わないとしている為に電話を置く必要が無いという理由になっているだけ。社員同士や取引先との連絡には下のiPhoneが使われている為「電話がない」のではなく「固定電話を設置していない」としないと嘘付きゴンボ。そもそも特商法ページに電話番号の記載があるので固定電話がなければまずい。

全社員にアイフォーン(iPhone)を支給している!

iPhoneを支給しているとなっているが、社員に個人契約をさせ、給与に最低額の6000円を支給しているだけということ。

これだと「支給している」ではなく、「契約させている」又は「所持させている」というのが正しい記載になるかと思うし、業務時間を短くすることや、プライベートの充実を掲げているが、iPhoneを全社員に契約させることで休暇中や自宅、出勤中などいつでもどこでも作業を強いるようになっている。これはひどいと感じざるを得ない。

私は会社契約の携帯電話を社内用と取引先連絡用に2台持たされていたが、自分の携帯電話もある上に他の携帯電話を持ち歩くのは邪魔な上に不便極まりない。しかも勤務時間外でも連絡があることを考えるとストレスにつながってしまう。本当に会社支給/貸与の携帯電話はやめて欲しい。ちょっとした業務連絡は個人の携帯電話宛てにはしずらいが、会社支給となるとしやすくなってしまう。

電話を置かない事で業務中にかかってくる電話での作業の中断を予防するという事もかかれているが、iPhoneに掛かってくるのであれば同じ。その代わり割り込みを禁止する時間を作るとありこれはよくある素晴らしい取り組みに感じるが、電話の代わりにSkypeなどのチャットツールを導入しているため、Skypeのメッセージ通知が割り込みに当たってしまう。中途半端すぎる。

しかも、GoogleAppsGoogle系のサービスをベースに使っているようだが、なぜかiPhone。個人に契約させるのにも関わらずiPhone限定。意味がわからないでごんす。

10連休が年4回!

P85.
年間の休日は140日以上で、この休暇水準は大企業並みになります。

1年間は52週なので週休2日だと104日。国民の祝日が年間15日で週休と重複なしとすると119日。正月、GW、盆にそれぞれ5日の休みがつくとすると134日。これは私が今までに働いてきた中小の会社では当たり前にあった休日になるためそれとは別に休日が6日しか無い事になる。年に4回10日の連休を取るとなるとどのような勤務体系になっているのかがわからない。ChatWork社の求人を見ても長期休暇の記載はあるものの日数の記載はなく、また年間休日数の記載もない。ニュース情報を見てもサポートの長期停止期間もない。どのように取られているのかが疑問。

こちらも経験者の方に教えて欲しいです。

顧客に会わない

単に営業職というものが基本的にないだけという事のようで、ホームページから契約出来るのでわざわざ出向く必要がないとのこと。ただし、「取引先との商談」を行なっている様子が記載されているので、全く辻褄があっていない。このような矛盾する点が書籍内に多々あるが個別には記載しないので本書を読んで確認して欲しい。

プレイステーションで取引先とテレビ会議をしている!

単にテレビ会議システムの導入が高額であったため、それが安価に実現できたプレイステーションを導入しているというだけ。プレイステーションである理由も何もなく、「単に安価」というだけ。しかもその環境を客先にも送付しそれを使わせているとのこと。客先は迷惑極まりないんでないかな。パソコンを使った業務なのだから、パソコンで完結できるのであればそうしたいはず。


このように、冒頭から突っ込みどころが満載となっている。

他の例も1点だけあげるとすれば、ランチトーク制度には突っ込みどころが満載すぎるどころか、完全に会社都合で社員のプライベートな時間を提供させているようにしか思えない。この制度を導入するのであれば最低限ランチ費用の上限を定めるべきではない。700円だと時給にも満たない額で1時間の打ち合わせを強いている。

このように非常に多くの見習うべきでない点もあり、ほぼ全てについて突っ込める内容となっている。


だが、私が非常に共感を持てた点もあり、

P33,34.
株式公開しない
他人資本入れない

これについては、ChatWork社についてはどのようになっているかわからないが非常に共感が持てた。

多くの会社が上場を目標に掲げているが私は理解できずにいる。株式会社、特に上場企業は株主の利益を追求するのが使命になるため理念とは別の道に進むことも余儀なくされる可能性があるが、上場や資本参加を受け入れないことで株主の利益ではなく理念の追求に向かうことが出来る。本来の企業はそうあるべきであると思う。

ノートーク制度についても珍しいものではないが素晴らしい。自分が働く会社でも是非とも実現したい項目になる。


このような感じで共感できる点もあれば見習ってはいけないと思える点も多々あるが、個人個人で感じ方が大きく違う内容になるかと思う。私は非常に多く不満を感じたが、この内容が書籍化されるという事はこの会社の取り組みについて素晴らしいと感じている企業が多くいるというのも確かだと思う。

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方

日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方