ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 吉田 竜(翻訳)

素晴らしい。感動した。これだけ先の展開が気になって「速く読みたい」と思った本は久しぶりだと思う。ノンフィクションであるのにワクワクさえ感じた。

本書はチェックリストの作り方や使い方を解説した書籍ではない。著者であるアトゥール・ガワンデが多種多様な業界でミスを減らすための仕組み調査に奔走し、それらを分析することでいかにチェックリストが重要で、ミスを減らすことができるかという事を著者の経験も交えて紹介されている書籍になる。

この説明ではチェックリストの作り方、使い方を調べている方には向かない書籍のように感じられるかもしれないが、チェックリストがいかに重要であるかという事がわかり、失敗事例も掲載されているのでチェックリストの理想的な形が学習が行える。また、チェックリストは作っただけでは何の意味もないという事も学べ、今後制作するチェックリストの重要度を知ることが出来る。実際に作られたチェックリストの例も簡単にではあるが紹介されているので参考にも出来るかと思う。

著者が外科医であるため手術のシーンの解説が多くあり、それらが非常に生々しく、私は吐き気を催してしまった。それほどに文章に迫力があるのかとも思うのだが、そういったことが苦手の方は先に心得ておいたほうがいいかもしれない。読んでいる最中に何度も書籍を伏せ、深呼吸をして読み進めたほど。

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】


先にも書いたが、著者であるアトゥール・ガワンデが医療ミスをきっかけにチェックリストの作成を考え、そのチェックリストの作り方や成功事例を調べていき、実際にチェックリストを作成して試行錯誤をしながら成長させ、チェックリストをWHOを提供し、自分もそのチェックリストに救われるというものになる。

医療以外で調査を行った業界は、航空や建設、災害対策、レストランのコック、金融、投資等、本当に多岐にわたる。医療や航空等の人命に直接関わるものから、料理の味付け、投資先の確認のような内容や、建築のような1年スパンの作業や、医療などの1分1秒を争うような作業でもチェックリストが有効に使われているという実態がある。そして、それらのチェックリストを利用している企業ほど高成長を遂げている。

このような調査を行い、自身でチェックリストを作成し推進を行う中でも著者は以下のように考えていた。

P216.
だが、もし私が縛り上げられ、本当のことを言わないと麻酔なしで盲腸をえぐり出すぞ、と脅されていたとしよう。正直に白状すると、チェックリストなんて意味がないと思っていた。他の人ならともかく、私の手術にそんなものが必要なわけがないじゃないかと。

いくら重要でミスが減らせるということを知っていたとしても、著者自身もそうであったようにチェックリストは軽視されているように感じる。チェックリストにあるような数項目なんか簡単に暗記できるし、そんな簡単なことを確認している手間が惜しいと思ってしまうのかもしれない。

だが実際は違う。実際に作業を行なっていると別の問題で必要である確認項目が飛ばされてしまっていたり、後回しにされていたことが実施されずに放置されていたりする。それをチェックするのがチェックリストなのだ。

著者はその文の後にこう書いている。

P216.
だが、私は間違っていた。チェックリストは私の手術においても有効だった。使い始めて以来、チェックリストに助けられなかった週はない。つい先週も、五件の手術で三回助けられた。

前文では自信満々であったのだが、実際に使ってみると自分でもその重要性、必要性に気づいたものになる。暗記していたとしてもそれがあたり前になると確認が漏れてしまうのだ。


ただし、チェックリストはマニュアルではない。ガイドラインでもない。チェックリストはあくまでも最低限チェックすべき内容を記載しているものになる。チェックリストに記載のある作業については、その場その場で判断できる知識を持ったものが必要になるのだ。

私の日頃の生活でも、チェックリストが有効に使えると思いついた点が多々ある。実践していきたい。

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】