ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

過負荷に耐えるWebの作り方 ~国民的アイドルグループ選抜総選挙の舞台裏 株式会社パイプドビッツ(著)

この過負荷なWebサイトとは、AKB48の総選挙時にCDのシリアル番号を入力して投票するサイトのようだ。私はこのシステムが全く何かわかっていなかったが、紀伊國屋長崎店のコンピュータコーナーに「新宿本店で今売れてます」のポップが立っていたので疑いもなく手にとった。

前回のこのポップがついていたのは「Land of Lisp」になるので、このポップを私は大変に信頼してしまい内容も確認せずに購入した。


結果から言うと本書の内容は中身が非常に薄く、期待外の内容となっている。最も期待外なのは、本書のタイトルは「Webの作り方」なのだが、本書に書かれたことは「作った経験」だ。作り方ではなく、株式会社パイプドビッツがAKB総選挙のために作った総選挙サイトの開発回想になる。回想ということでほとんど技術的なことには触れられておらず、「こんなことを考えた」程度の内容しか書かれていない。

たしかに技術的な内容は今後のリスクのためや、契約のために公開できるものではないかもしれないが、そうであれば本書を書く意味とは何なのだろうと疑問を呈さずにはいられない。

過負荷に耐えるWebの作り方 ~国民的アイドルグループ選抜総選挙の舞台裏 (Software Design plus)

過負荷に耐えるWebの作り方 ~国民的アイドルグループ選抜総選挙の舞台裏 (Software Design plus)


また本書で「作った経験」が書かれているのも序盤のごくわずかだけになる。中盤以降は制作に使ったツールの使い方が記載されるという全く意味のない内容になっている。本書に書かれている内容以上のことはGoogleで検索すればすぐに見つかる程度のものになる。

本書のタイトルから騙されて「高負荷のサイトを改善しよう」という方が読まれるのではないかと心配になる。本当に「全く」と言っていいほど参考にならない。本書に書かれているプロジェクトは、私が言うのも何だが「たまたま」成功したに過ぎないと感じる。それもタイトルに「毎秒1万アクセスに耐える」とあるが、実際の負荷はその1/10以下になり、その負荷に実際に耐えることができるかも不明なシステムだ。

そもそもに「毎秒1万アクセス」は営業が勝手に契約した誤った試算になるため、プロジェクトとしてそもそも破綻しているものになるのだ。オーバースペックに過ぎず、そのオーバースペックなシステムを作り、実際にはそれが稼働できていない。大規模システムの経験がない私でもこのシステムにはこれほど疑問に思えた。


以上のように本書のタイトルに沿った内容は序盤のみで、その序盤も技術的な情報には触れられておらず、内容も個人的な感想が大半を占めるという内容になっている。しかもそこにかさ増しとして不要なイラストが多々挿入されている。本書の内容をまとめると30ページもないのではないだろうか。

株式会社パイプドビッツは本書を出版して「すごいシステムを作った」と言いたいのかもしれないが、私は逆に不信感すら感じてしまう内容となっている。そもそもに申し訳ないがこの会社名すら私は知らなかった。

過負荷に耐えるWebの作り方 ~国民的アイドルグループ選抜総選挙の舞台裏 (Software Design plus)

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