鉛筆をなぜ削るのか
鉛筆というか芯を。
いつからかわからないが私は鉛筆を削らない。もちろん「芯」を。「軸」は削る。
理由は単純で鉛筆の芯を削る必要がないからだ。
例えば鉛筆の芯を削る目的はなんだろうか。芯の先端を鋭利にして細かい字を書きたいというのであればシャープペンシルを使えばいい。常に同じ太さの線を引くことが可能だ。鉛筆の先端を削ったとしてもその細い線を書けるのはほんの一瞬だ。名前と住所をかけば最初の倍以上の太さとなっている。
その一瞬の鋭利さを求めるのであれば鉛筆は向かない。
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私は万年筆を使っているイメージがあるようだが普段は鉛筆を使う。万年筆は確かに書きやすいが鉛筆には劣る。万年筆を使うのは主に書き直しを「しない」ものだ。資料や図表など、書き直しをしないものを万年筆で書き真正性を保証する。主には自分向けの文章であるが将来にわたって手を加えずに、新しい版を作ることでそれを更新していく用途として万年筆を使う。
だがそれ以外のメモなどは鉛筆を使う。鉛筆はどのような状態でも書くことが出来、温度や湿度に影響を受けず粗雑に扱っても芯を見るだけで書くことがほぼ保証されている。その上に他の筆記具に無い軽さがあり、芯は一切の引っ掛かりがなくサラサラとどのような方向にでも書ける。安価な紙であっても万年筆とは違い影響を受けづらい。これは鉛筆にしか無いメリットだ。最近は芯ホルダーも使うが少々重い。
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このように私は鉛筆を使ってきた。だが鉛筆削りを使うことは殆ど無い。資格試験などで鉛筆が指定されており、更に筆記欄が狭い場合は仕方なく鉛筆を削る。私は字が汚いために削っていない状態では枠内に識別できる文字を書くことが出来ない。特に今年はじめに受験した日商簿記試験では記述式のためにキンキンに削った鉛筆を何本か用意した。
だが普段ではこのような制限がない。自分の好きな大きさで、自分の好きな太さで、自分の好きなように文字を書ける。鉛筆のメリットはこのような場面で生かされる。万年筆も文字の太さを多少変えることができるが少々無理をする必要がある。太く書くにはペン先に圧力をかけ、スリットを広げ太い線を書くのだ。万年筆に負担がかかる。一定の太さで書き続けることがそもそもの設計になる。
だが鉛筆ではこのような必要はない。芯を削らなくても、筆記角度を変えていくことで自分の必要な太さで線を書ける。一本の鉛筆を立てて書いたり寝かせて書いたり、寝かせて書いて摩耗した芯の側面で書いたり。自由に線を変えることが出来る。もちろん一定の角度で回していくことで同じ太さで線を引き続けることも出来る。これは鉛筆のデメリットではなくメリットだ。
鉛筆の芯を削れば強制的にリセットされこのメリットは殺されてしまう。むしろ芯をリセットすることに慣れてしまったら太さを変えるために芯を削り続けなければならない。
芯を削るということは鉛筆を捨てていることと同じだ。鉛筆一本の筆記距離は50kmだという。これはもちろん芯を削らない時の筆記距離だ。この距離の線を書けないと思うのであれば、あなたはそれだけ鉛筆を捨てているということだ。鉛筆を削った時の黒いカス。あれがあなたの捨てている鉛筆だ。
鉛筆は言うまでもなく芯で字を書いている。鉛筆を削るというのは軸と一緒に芯を削るということで、芯を削るということは鉛筆を捨てているのだ。シャーペンの芯をわざとボキボキと折って捨てているようなものだ。50kmというのはシャーペンの芯200本分程度の距離だ。鉛筆一本でシャーペンの芯200本分と同じ程度の線を引くことが出来るのだ。
50kmというのは万年筆のペン先の寿命のようだ。鉛筆一本は長持ちするイメージのある万年筆のペン先と同じくらいの寿命がある。その寿命を意図的にあなたは短くしてしまっている。(万年筆の寿命についてはこちらの記事を参照「万年筆は実用品じゃないのか」。)
また、もちろん鉛筆を削ると芯が細くなる。芯が細くなるということは耐久性が落ちるということだ。芯を削った鋭利な状態ではすぐに先が欠けるのもそのためだ。私は鉛筆の芯を折ることなど今までに思い出せない程度になるが、それも鉛筆を削っていないからだと言える。鉛筆を削らないから設計通りの耐久性が維持される。耐久性が維持されるから折れることはない。
鉛筆削りはたしかに便利だ。鉛筆を刺してこねくり回せば軸が削れるために安全でお手軽だ。だがその利便性と引き換えに鉛筆の魅力と手で削るという経験を捨てている。例えば最近購入した「切出し小刀」でも鉛筆を削ることは出来る。肥後守が人気のようだがあれはあまりいいものではないので小刀や、両刃でもカッターナイフが便利だ。
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カッターナイフでも最近は安全面なども考慮されたものが多く出ている。例えばKOKUYOのHA-S100は私も利用しているが便利なカッターナイフだ。刃の繰り出しを側面に付けずに上部に付けたために力を入れて握っても刃が誤って繰り出されないようになっている。このおかげで左右対称になりグリップもラバーコートで握りやすい。刃もフッ素コートで汚れづらく二段刃で鉛筆を削っても刃こぼれがしづらい。
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このように最近は刃物(カッターナイフ)でも安全を意識したものが多く出ている。確かに危なく使えば刃物は危ない。だが、料理でも包丁を使うように刃物は生活から切り離すことは出来ない。だからこそ小さなうちにその刃物の扱い方を覚えておく必要がある。そのためにもカッターナイフや小刀で軸を削ることは自分のためにもなる。
小刀が危ないであればもちろんクラフトナイフでもいい。クラフトナイフなら刃を研ぐことも出来る。
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「鉛筆を削らない」とは関係ない話が多くなったが、私はそのような理由から鉛筆を削らない。自分で小刀で軸を削る。画像はわかりやすいように少々大げさにしたが、普段はこれの3/4くらいにしておけば鉛筆を削る頻度も多くなく芯が折れることもない。
軸の付け根を直角に近くするとそこに負荷が集中して折れやすくなるが、画像程度の余裕を付けておけば十分だ。
いやぁ、鉛筆はいいものだ。万年筆もいいけどね。
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