ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

新聞が新聞紙になる日

「新聞取ってきて」

私が小さいころ、親からそう言われて郵便ポストに新聞を取りに行っていた。

だが、髪を切るとき、てんぷらを揚げるとき、靴を洗うとき、「新聞紙取ってきて」と、親からそう言われて台所の片隅の新聞紙置き場に新聞紙を取りに行っていた。

新聞が新聞紙にはいつなるのかな。


一度読まれ、新聞紙置き場に入ったらそれは新聞ではなく新聞紙になるのか。

否。

親からは「昨日の新聞取ってきて」、「先週の火曜日の新聞探して」と、新聞紙置き場に置かれた中からも、「新聞」と指名されて特定の日付の新聞を探すことがあった。

同じ「過去の新聞」でも、同じ日付の新聞でも、新聞であるときもあれば、新聞紙であるときもある。何が違うのか。


特定の日付を示したら、新聞紙から新聞になるのか。

否。

今日の新聞、昨日の新聞、先月の新聞。だが、今日の新聞紙、昨日の新聞紙とはあまり聞かない。だが、近日中の新聞は読み返す可能性があるのか、てんぷらをするときには、「先月の新聞紙」と時期を指定されるにも関わらず、新聞紙で有るときがある。


読むときは新聞で、別の用途では新聞紙になるのか。

否。

確かに、てんぷらに使う時も、靴を乾かすときも、新聞ではなく新聞紙になる。これは答えに近づいてきたのか。
だが、チリ紙交換では「古新聞」と募集している。チリ紙交換はリサイクル業者であるので、読む用途ではないにもかかわらず、「新聞」としている。


1セットではなく、数枚を抜き出すと新聞紙になるのか。

否。

天ぷらでもなんでも、1セットではなく、中から必要枚数を抜き出して使う。ということは、1セットでは新聞であり、一部を抜き出すと新聞紙になるのか。
チリ紙交換ではわざわざ一部を集めないので「古新聞」と言っている可能性はある。だが、「今日の新聞のテレビ欄頂戴」というように、特定の一部だけを抜き出しても、「新聞のテレビ欄」だ。

英語で有れば新聞は「newspaper」。
最初から新聞紙扱いだ。


日本語は難しい。