ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

ラジオとテレビ放送がインターネットによりなくなるとか妄想の度が過ぎる

コレは何度か聞いてきたが、またまた聞いたので頭の悪い人たちに説明しておこう。

ラジオやテレビは絶対になくならない。確かに100年後ならそれもわからないが、今後10年や20年でラジオやテレビがなくなるわけがない。なぜこんな簡単なことがわからないのだろうか。

今日聞いた元となった話はコレだろうか。「過去番組を無料でネット配信 在京民放5社、検討開始

確かに現在はテレビの視聴率が下がり、インターネットでの違法配信とその視聴が多くなってきている。だがしかしその違法配信となっているのはそもそもテレビ放送や、テレビ放送がDVD化、ブルーレイ化されたものを違法アップロードされているものに成る。現在インターネット上に出回っている高再生数のビデオにネット配信のものは極わずかで、その視聴数もテレビ放送からしたら極僅かなものだ。

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確かに今後はインターネットベースでもよりハイレベルなコンテンツが配信されるのは間違いないだろう。だがそれにはまだまだ時間がかかる。これはコストが見合わないためであるが、それは今回の話題ではないので割愛する。それについてもこの記事の内容をベースに考えてもらえればある程度は考えられるかと思う。

ラジオやテレビがなくならないとは、現在の家庭に普及している割合からではない。普及度が多いからなくならないというのは完全な間違いで、例えば普及度が多かった洗濯板も、ポケベルもより新しく便利なものがあれば廃っていく。ラジオもテレビにより廃ったし、テレビもブラウン管が液晶、プラズマ、液晶化したのも普及度とは関係ない例だろう。


まずテレビやラジオがなくなると思っている方は、テレビの仕組みやインターネットの仕組みを全く理解出来ていないだろう。そしてコスト意識も全くない、そもそもにコストという概念すらも理解できていないだろう。

例えばテレビ放送は2020年までに4kから8kへのロードマップが出来ている。8kをインタネットストリーミングするとどれほどの通信帯域が必要か計算したことはあるだろうか。今後の一般家庭へのインターネット通信の高速化はそこまで進まない。

そしてなにより、日本国内の基幹ネットワークでもその通信を捌ける土台がない。

首都圏であれば無線通信技術で何とか成るかも知れないが、例えば地方ではそれが出来ない。インターネットであれば日本中どこでも見れると思いきや、通信速度の都合により見ることが出来ないのだ。

 

たとえばなぜこれだけインターネットが普及した現在でもテレビ局は電波を出して放送しているのか、放送衛星でも、通信衛星放送でも同じだ。WOWOWなんかはアーカイブをオンデマンド配信しているが、基本は放送衛星を利用した衛星放送になる。

インターネットでは、閲覧者毎に放送を配信しなければならない。放送局側からすれば、多対多(放送局対閲覧者)の配信を行わなければならない。だが電波放送であれば、一対多(放送アンテナ対閲覧者)の配信を行える。

電波放送であれば放送局は放送アンテナであるスカイツリー(首都圏)に電波を飛ばすなり有線なりで放送内容を送れば、スカイツリーが電波として放送をばらまいてくれる。そしてその電波が受信できる地域の閲覧者は何も意識すること無く、電波が届く限り視聴を配信とリアルタイムに行うことができる。

コレとは逆に、インターネット放送では閲覧者がいつどの番組を視聴するかわからない。なので視聴者のリクエストに応じて、その人のためだけに放送をインターネット回線を通じて送らなければならない。これはインターネット上の生放送の場合でも現在のインターネットの都合上は同じで、家族が一人ゝゝバラバラのテレビで放送を見ていれば、「一世帯」という単位ではなく「一台づつ」という単位でテレビ局は放送を配信する必要がある。

5人家族が一人づつ同じ番組を違う部屋で見ていたとすれば、テレビ放送であれば出ている電波を受信しているだけなので放送局に何の関係もないが、インターネット配信であれば放送局は5台分の配信をしなければならない。

 

首都圏であれば現在はスカイツリーがメインの放送アンテナとなるが、スカイツリーは1650万世帯をカバーする放送アンテナとなっている。スカイツリーから電波を出すだけで1650万世帯が放送を視聴できるとはどれほどすごいことかわかるだろうか。

テレビの視聴率で「10%wwww早くやめろよwwwww」などと言っているアホの人間が居るが、先のスカイツリーの配信数から考えると1%で16万5000世帯だ。10%で165万世帯が見ているということで、それも放送であるのでリアルタイム視聴としてそれだけの世帯数があるということだ。世帯であるので、視聴者数で考えるとその倍以上に成るだろう。

だがインターネット配信では、例えばニコニコ生放送の最も人気のある番組でも数万人程度だろう。2010年に放送した、Ustreamでの宇多田ヒカルのライブ中継でも35万人以下だ。インターネット放送など視聴者数が所詮その程度でしか無い。

いや、そもそもに視聴者数の限界がその程度だと考えてもいいだろう。例えばニコニコ動画では、プレミアム会員にならなければ高画質動画を視聴することが出来ない。これはインターネット回線の使用料が高価故、それを無料で配信することは出来ず、会員に一律で回線コストを分散させることで回線コストをまかなっている。ニコニコ動画ではスポンサーが付いている番組があるにしても、そのスポンサー料だけでは配信が賄えないのだ。

インターネット放送とはそれ程にコストがかかる。そして、先にも書いたように、例えば1Mbpsの動画でも同時に3000万人に配信するだけの通信帯域は存在しない。今後も何十年単位でそれだけ高速な回線は確保されることはない。

 

このように、テレビ放送とインターネット放送では視聴可能者数と、その視聴者に配信するコストが全く違うのだ。そしてそのコストの差が非常に大きいためテレビはものすごい有利な放送方法に成る。

そしてこれは単に「配信コストが有利」と言うだけでなく、災害にも強いことを意味する。確かに放送アンテナという肝が破壊されればテレビ放送はそれだけで放送が中断してしまうが、例えば現在ではスカイツリーに障害が起きた場合は東京タワーに切り替えるなどバックアップ体制も敷かれているし、そもそもに壊れたらその一つを直すだけでまた1650万世帯の範囲に配信を行うことが可能に成る。

だがしかし、インターネット配信では、有線は切れた箇所を全て復旧する必要があるし、携帯電話通信でも、アンテナ基地局を一つづつ直していかなければならない。先の地震の際もそうであったが、停電にも非常に弱い。自己発電やバッテリでテレビが動くとしても、インターネット放送では放送局や中継局など全てが通電されている必要があるが、放送であればアンテナと受信機の電源さえ確保できれば受信ができる。

このように、テレビやラジオは災害にも非常に強いのだ。災害キットには必ずラジオが含まれているのもコレが理由に成る。

 

このようにどう考えてもインターネット配信がテレビに変わることは今後数十年レベルでは考えることは出来ず、それを考えること自体がバカバカしい発想に成る。

そして、先に書いたインターネット配信実験もそうだが、インターネット配信をすることにはコストが非常に大きくかかるため、それを無料で行い続けることができるわけがない。なぜわざわざ赤字になることを自ら進んでいく企業があるのか。

なんらかの新しい広告形態を見つけるなど有用なものが見つからない限りはテレビ放送をインターネット配信することは叶わないだろう。