消しゴムをなぜ使うのか
今までに何度か勉強法を書いてきた。その中では「ノートを取るな」という事を書いてきたが、それと合わせて思うのは「消しゴムを使うな」という事。
図書館ではよく消しゴムを使っている人たちを見る。小学生からジジババまでノートに必死に書き込み、消しゴムを使って消している。図書館の机にも「消しゴムのカス」を入れるゴミ入れが常設されているので、私の周辺だけではなく、世間的にも「消しゴムを使って消す」という行為は一般的なものになるのかと思う。
私が今思い出してみると、小学校中学校の時代は消しゴムを使っていたが、高校やそれ以来には試験の解答以外には消しゴムを使っていないように思う。今使っている消しゴムもいつ購入したのかわからないままに手元にある。そして、私の記憶では消しゴムを使い切ったことがない。
頭の中の消しゴムは無意識に働き私の記憶をドンドンと消し去っていくのだが、それに反比例するように私は消しゴムを使っていない。
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まず消しゴムについて考えて欲しいのは「なぜ消す必要があるのか」という事。
先に書いたように資格試験であればマークシートや解答欄に「確実な一つの解答」を書く必要があるので、解答が間違いであればそれを消す必要がある。これは理解できる。私も日商簿記の試験を受けた際は何度も消して添削者が読めるであろう文字になるまで書きなおした。マークシートであればまずは問題用紙に記しをつけ、その後に一気にマークシートに書き写すので消しゴムは使わないだろう。
だが、このような試験以外であれば消しゴムを使う必要は私はないと考える。いや、消しゴムを使う「必要がない」のではなく、消しゴムを「使ってはいけない」と考えている。この理由を少し考えて欲しい。
消しゴムを使うという事は何らかの間違いが起こったという事は想像できる。算数や数学であれば計算間違いや数字の書き間違い、国語であれば文字の書き損じや漢字間違い、理科であればメスシリンダーの絵がうまく書けないのだろうか。
だがそれでいいのではないか。あなたはミスをし、それに気がついた。そしてあなたはそれを訂正、修正する能力を持っている。であれば、それは消さずに正しいものをその横や下、次のページにでもどこにでも書けばいいのではないのか。あなたはそのミスをしたという「記憶」や「経験」が大事になる。
ノートを取ることは先から否定しているが、もしノートをとっているとしても、その失敗と成功の歴史が大事かと私は思っている。失敗を残しておけば、次に見返した際に注意しなければならないことが理解できる、自分の間違いやすいところに気がつける。そもそもに、それを消す時間すらも節約して勉強に励むことができる。消しゴムで消してそれを書きなおす時間など無駄でしか無い。
私は以前に作文用紙に作文をしている少年と出逢ったことがある。その少年は何度も何度も作文用紙の作文を消して書き直していた。作文用紙の最後の方まで書いた時に前半の送り仮名を忘れているとそれ以降を全て消してまた書きなおす。表現が悪ければまた書きなおす。その少年は1枚の作文用紙だったのでそれもまだ可能であったが、これが複数枚の場合、一枚目にミスがあったことを考えるとそれ以降を全て書きなおすのだろうか。恐ろしい。
これはたしかにフォーマットとして提出する課題であったのかもしれないが、であればそれをまずはノートに下書きすれば良い。下書きし、試行錯誤の跡を残し、決定した所でいざ作文用紙に清書する。いきなり作文用紙に書くことはなかなか無謀だ。かの夏目漱石の生原稿を見ても、400字詰めの原稿用紙は400字ではない。一度はそれに400字詰めで書き始めても途中追記や修正としてどんどん描き直され添削されている。原稿用紙の余白が大きいのはその修正を書き込むエリアのためだろう。
この作文の例はフォーマットの問題で消しゴムを使う必要があるのかもしれないが、問題はそれではなく、その作文の試行錯誤の結果を残しておくことだと思う。一度書き、消し、書き直し、消し、書き直し、としていると、最初に思いついていたことがまた思いつくかもしれない。それでいいこともあるかもしれないが、だがそれがすでに考え及んでいたという事すらも忘れているかもしれない。だからこそ、自分の試行錯誤の結果を残しておくべきではないか。そうすればその時々の自分の発想についても思いいることができる。
この「消しゴムを使う」と言う行為についても、先から書いているような「ノートを使うことの無駄さ」につながっているのかと思う。ノートに書くというのは「勉強」することではなく、その「ノートに書く」ことが目的になっていると書いてき。「消しゴムを使って書きなおす」というのも、結局はそのノートを「綺麗に書く」という事が目的となっているのではなかろうか。勉強するためであればその目的以外を排除して進むべきであるが、消しゴムを使うというのはその勉強を煩わせる。「削除」するだけであれば二重線でもサッと引けばそれが「間違い」であることは一目瞭然になる。
消しゴムを使わずにドンドンと先に進むことは「紙のムダ」と思われる方もいるかもしれないが、それを消すという行為にも「消しゴム」を消費していることを忘れてはならない。無駄というのは値段の問題ではないが、値段の問題で考えるとA4用紙500枚が300円以下で売っていることを考えると、消しゴム一つ100円というのは割高ではないだろうか。
私は鉛筆が書きやすく普段から利用しているが、学生諸氏は「消さない」と言う練習のためにも万年筆やボールペンでノートを書く習慣をつけてもいいのではなかろうか。私も普段から消さないために万年筆を使うが、この習慣が私の勉強シュウカンにも繋がっているのではないかとこれを書きながら思っている。
そして更に、万年筆のインクは濃いため、鉛筆で書かれたノートよりもその文字が目に入りやすくなっている。やはり普段から万年筆を使うことをオススメしようぞ。
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