ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

下を向いて生きよう。 安田 佳生(著)

これは面白い。興味深いという点の面白さもあるのだが、読み物として非常に面白い。

安田佳生さんの著書になる為ビジネス書であると思われるかもしれないが、本書は安田佳生さんの自伝のような内容になっている。自伝というにはライトすぎるので私小説が近いかもしれない。だが、安田佳生さん自身の経験が書かれているためノンフィクションの内容になる。

内容としても笑える内容が散りばめられており、文章もうまく非常に読みやすい。既読の他の書籍は読むのに2時間程度かかるのだが、少々ページが少ないこともあるが1時間程度で読み終えることができた。それくらい内容が読みやすく集中できる内容になっている。
ただし本人は大真面目にやっているのでなぜ笑われるのかわかっていない。そういう点が面白いのかもしれない。私も似たような幼少期であったため共感できてさらに笑える。

株式会社ワイキューブ安田佳生さんのことを知りたいと思っている方がいればお薦めできる。本書を読めば、株式会社ワイキューブ代表取締役 安田佳生安田佳生の考え方、そのベースになっている少年期の経験や進学についての判断など、色々なことがわかる。安田佳生の履歴書と言ってもいいかもしれない。

下を向いて生きよう。

下を向いて生きよう。


このように面白いと書いているのだが序文にはかなり重たく考え深い内容が書かれている。

P1.(ページ番号記載なし)
逃げたこと、嘘をついたこと、愚痴を言ったこと。
そんな経験など一度もないという、つまらない人間と私はおつきあいしたくありません。
人生には成功か失敗かしか無い。本気でそう思っているような、
そんな薄っぺらい人間とも私は言葉を交わしたくありません。

人は弱く、傷つきやすく、流されやすい。
それゆえに人間はおもしろく、人生は味わい深いものとなるのではないでしょうか。
小さなことにうじうじと悩み、自己嫌悪にのたうちまわって生きていく。
そして、ほんの小さな出来事に自己満足してしまう自分。

それがまっとうな大人の姿だと、私は思います。

よくある自己啓発本には、「どんなことからも逃げるな」、「どんな嘘もつくな」、「誰にも愚痴を言うな、自分の中にしまい込んでおけ」というような内容が書かれているかと思うが、安田佳生さんはそんな人間を否定し、そんな人間になることを拒み、自身がそのような人間にならないように生きている。そして、「そのような生き方こそ人間らしい幸せな生き方ではないだろうか」という事を本書で説明をされている。

他の著書を読んでいたため本書もビジネス書だと思って読み始めたのだが、前著の「千円札は拾うな。」とは違いビジネス面には触れられておらず、純粋に安田佳生さんの考え方や過去の経験が記されている。成功例を書き連ね「私はすごい」としているような書籍とは違い、失敗例や自分の頭の悪さ、自分が他の人間より劣っているという面の方が多く書かれている。

そのようなことを書くと、「それらの失敗を経験したことで現在の成功がある」というような内容の書籍と勘違いするかもしれないが本当に本書は違う。そのような人生を歩んできた私が安田佳生であり、そのような人間であるから現在の株式会社ワイキューブがあり、現在の安田佳生であるという事が書かれているだけになる。なので、「成功者としての安田佳生」を知りたいのであれば本書は向かないかもしれない。本書はそのような憧れを奪ってしまう可能性がある。だが、安田佳生はそれを望んで本書を書いているようにも思える。


本書は面白いと思える点が多々のあるのだが、他の書籍のようにビジネス的な内容ではないため引用した感想は書かないでおく。実際に読んで楽しんで欲しい。

トーテムポールや高校の中間試験、教科書のマーカー部分では笑えたし、ペンフレンドの話については笑うことが出来なかった。自分も過去に似たようなことを経験している。泣けた。

下を向いて生きよう。

下を向いて生きよう。

千円札は拾うな。

千円札は拾うな。

私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日

私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日