マイナス同士の掛け算はなぜプラスになるのか
「数学を考える」で、「マイナス値同士の掛け算は何故プラスになるのか」と言う問題を書いた。
これは先の記事の通り「手続きと本質の違い」をきちんと理解しているかという問いかけたつもりであった。だが数人に質問した所、驚くべきことにそれを説明できる人がいなかった。
これは類は友を呼ぶと言う通り、私の周りには私のレベルの人間が集まるかも知れないが少々問題が有る。
例えば現在までそれについて考えてなかったとし、手続きとしてそれを覚えていたというのであればそれでも良い。それまで考えていなかったとしても、私が質問した時点でその証明と理論を考えればよいだけだ。
それが出来ないというのは、知識ではなく思考能力の問題となるだろう。
まだそれについて考えていな方は是非とも考えてから読み進めてほしい。
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まず「マイナス同士の掛け算の結果がプラスになる」と言う手続きを知っていて、その理由を聞かれたとすれば、その説明には二種類の方法が有る。
その結果を証明する方法と、その概念を伝える方法だ。
証明ならプラス同士の掛け算、プラスとマイナスの掛け算、マイナス同士の掛け算と連続していけば証明を行えるし、概念であれば何らかの図示をすればそれを説明できるだろう。
例えば証明式とすればこんな感じで証明できるだろう。
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この説明は不要だろうが念のために補足しておくと、両辺が同じ値であればその両辺に同じ値を加算しても同じ値であることは変わらないと言う性質を利用した証明だ。
簡単には「1=1」があったとして、それを「1+2=1+2」と両辺に「2」を加算しても等号記号は変わらないと言うことだ。
これで数学的な証明は出来た。それによって
に成ることはわかった。
だがこれでは数学的にそれが証明されただけで、それがどういうことなのかということがわからない。
数学的証明をされても「マイナス同士の掛け算とはどういう意味か」と言うことがわかっていなければそれを使う際にも意味がわからないだろう。
考え方としてはこんなだろうか。
[image:id=388]
これは話しながら説明したら早いのだがそうもいかないので文字にする。
まず、基点(0)から右に行けばプラス、左に行けばマイナスとする。便宜上座標系に合わせているだけでコレはどんなでも良い。左右反対でも上下でも良い。
とにかく特定の一方向に進むことがプラスで、逆方向に進むことはマイナスだ。
プラスの方向を向いているとすれば、前に一歩歩くのがプラス移動で、後ろ向きに歩くのがマイナス移動であるとイメージすればわかりやすいだろうか。
そして、掛け算の左側が距離、右側が回数として考える。「3×2」であれば、順方向に3メートルを2回進むと考える。であれば6メートルだろう。
これはわかる。
そして次に、「-3×2」であれば、逆方向(マイナス)に3メートルを2回進む。であれば、結果的にマイナス6メートルだろう。
これもわかりやすい。
次がお題のマイナス同士の掛け算「-3×-2」だ。これも考えるべきは距離と回数だ。コレはわかりやすくするために少々分解する。「-3×-1+-3×-1」とする。
まず、距離として「-3」はわかるだろう。これはマイナスとプラスの掛け算と同じで逆方向(-3)に3だ。そしてわかりづらいのはマイナスの回数だろう。だがコレも簡単だ。回数は特定の方向に向かう回数なのであるから、それがマイナスということは逆方向に進む回数に成る。
ということは「-3×-1」というのは「-3」メートルを逆方向に「1」回進むということになり、逆方向に3メートルを逆方向に1回進むということに成る。
わかりづらくなってきた。
これを方角に直す。東を順方向(プラス)として、西を逆方向(マイナス)と考える。
距離が「-3」とは、西に3メートル進むことだ。マイナスというのは西を指しているのだから、西方向が進む方向の順方向に成る。だが、「-1」とはそれを逆方向に進む回数を指定している。ということは順方向は東ということになり、東に3メートルだ。
少々文章としてはややこしいが、図を自分で書いて追いながら考えるとわかりやすいかと思う。
証明や説明の方法は数あれど、これらもその一つになる。
普段の計算は一々こんなことを考えていれば大変なので手続きとしてそれを行うことは悪くない。だが、その本質を知らないままに計算をしていれば、その手続きから漏れることがあれば途端に理解できなくなるだろう。
それが分数同士の掛け算が出来ない大学生と言われてしまうのだろう。
この問題は「手続き」だけを暗記しているため、その暗記した内容を忘れてしまった為に起こってしまう。手続きとしてではなく、「分数とはなにか」と理解していれば掛け算だろうが割り算だろうが指数だろうがどのような計算でも行える。
手続きではなく本質を理解せよ。