ゴミ箱の中のメモ帳

まだ見ぬ息子たちへ綴る手記

背すじは伸ばすな! 姿勢・健康・美容の常識を覆す 山下 久明(著)

P4.
医師は科学者でなければなりません。そのため医師が書く健康本は、たいてい医学的根拠が綴られています。ところが、従来の姿勢論にはそれがなく、「背すじを伸ばせ!」のほぼ一点張りであったために、医師という立場で姿勢本を出すには至らなかったのでしょう。
では、なぜ従来の姿勢論には、医学的根拠がなかったのでしょうか?

本書の言いたいことはこれに限る。世間には多種多様な姿勢矯正本や姿勢矯正施術施設が氾濫しているが、その目的となる「姿勢矯正結果としての背すじを伸ばす」と言う理由が見当たらない。日本人は子供の頃から盲目的に「背すじを伸ばす」と言うことを教えられ、その根拠は全く教えられてこなかった。

本書はその「背すじを伸ばすという不自然な姿勢」について考えを改める書籍になる。

背すじは伸ばすな!  姿勢・健康・美容の常識を覆す (光文社新書)

背すじは伸ばすな! 姿勢・健康・美容の常識を覆す (光文社新書)


本書の前書きにも記載されているが、「傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学」と同じように、世間の盲目的な常識に一石を投じる書籍である。

「傷は消毒し乾燥させる」。この考えも盲目的に信じられているが、実際には全くその逆になる。傷は多くの場合消毒する必要はなく、乾燥させるのは逆効果。これらの行為は傷をより深めることになってしまう。

このように世間の常識と現代医学との間には大きな乖離があり、その大きな要因は「医学的、科学的根拠のない民間療法」が現在でも当たり前のように流布されることにある。先の「空気を読むな、本を読め。」にも書いた通り、知識をつけるためには「自分の考えと逆の考え」を知ろうとする必要がある。そして、その逆の考えこそが正しいことが多々あり、その正しきを知った時点で自分の考えを改めなければならない。「空気という常識」にしがみついていては正しい知識を得ることは出来ない。


私は「背すじを伸ばす理由がわからない」と以前から考えており、書店を探しても「背すじを伸ばす方法」の書籍は氾濫しているがその逆説的な書籍を見つけることが出来ずにいた。そんな中タイトルを見た途端に本書をそのまま購入したというものになる。

本書の中には色々な生物学的知識や肉体的知識が広く扱われているが、「ならどうしたらいいのか」ということはあまり紹介されておらず、更にはその方法についての医学的根拠も多くは扱われていない。なので本書を鵜呑みにすることは「背すじを伸ばすことを鵜呑みにする」のと同じく危険なことであるが、「背すじを伸ばす」ことに対しての根拠が薄いことを理解するには十分になる。

よって長々とした前置きや姿勢とは関係ない話が多く続けられており読むのが辛くなるが、その場合は興味があるところだけパラパラと読めば十分な内容となっている。だが、その内容を知るためにはそれらの生物学的、肉体的知識が必要になるため、それらの知識がない方々は最初から最後まで読まなければ意味がわからないかもしれない。

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)