不確定性原理がわからないって?
工業高校機械科の私は学校教育では不確定性原理を学ばなかった。
だが数学や科学に興味を持って勉強し始めると、この不確定性原理が度々登場してくる。初登場からしばらくは無視を決め込んできたのだが、ある時たまたま調べるとこんな素晴らしく目を開かされる原理はなかなか無い。
確かに「不確定性原理」と言う考え方は学校教育の中では盲点であった。
だが世間の不確定性原理の説明はあまりにも複雑過ぎる。何故複雑にしたいのかは「量子力学が難しい学問」と思わせて自分のやっていることに威厳を持たせたいのか、それとも学者としてきちんと誤解なく説明しようということなのかはわからない。
例えばWikipediaの「不確定性原理」の説明もこうなっている。
量子力学における不確定性原理は、粒子のある相補的変数として知られる一対の物理的性質(例えば位置xと運動量p)を同時に知ることができる精度の根本的限界を示す様々な数学的不等式のいずれかである。例えば、1927年にヴェルナー・ハイゼンベルクは、ある粒子の位置をより正確に決定する程、その運動量を正確に知ることができなくなり、逆もまた同様である、と述べた。
まぁこの「位置」と「運動量」とした説明はまさに量子力学の量子の状態として説明であるので仕方がないが、不確定性原理がどれだけすごいものなのかを説明するにはもう少し概念的や、簡易的な説明でもいいと私は思ってしまう。
もちろん厳密な量子力学者からすれば批判するべき説明に成るだろうが、それが全く変わらないよりも、概念的にどういったものか知っておくことが私は重要だと私は考える。
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さてここからが本題になる。
「不確定性原理」とは簡単に説明すると、「観測という行為は観測対象に何らかの影響を与え、そのためその観測対象について正確な観測を行うことが出来ない」というものだ。
意味がわかるだろうか。
「観測した時点で対象になんらかの影響を与える」とはなかなか難しい考え方である。言葉としては単純だが、「なんらか」とは何かわからない。何かわからないから「なんらか」であり、「なんらか」であるから何かわからない。
例えば「観測」とは、言葉の定義にもよるが「観察」とは違う。「観測」とはなんらかの尺度によってそれを「測定する」という行為であり、何らかのデータが出力されることに成る。
なので、例えばバードウォッチングでもそれは影響する。
例えば「野鳥の観察」であれば特定の対象を見る行為であるが、「野鳥の観測」であれば、一定圏内の野鳥の数なのか、飛行距離なのか、休憩時間なのか、とりあえず何らかのデータを採取する。
だが野鳥を観測しに山に入るということは、「観測のために人間が侵入する」と言う観測行為が存在する。それが鳥に見つかれば鳥は逃げるかも知れないし、逃げることによって飛行距離が長くなるかも知れない、休憩をせずに他の場所に行くかも知れない。
これはどれも、観測行為によって鳥に影響を与える。
これが「観測という行為は対象に対して何らかの影響を与える」と言う例だ。
だがこれでは「遠くから観察する」や、「森の外から森に入る鳥を数える」など色々な観測方法の変更を考えるだろう。だが、遠くから観察するにしても、望遠鏡を使ってみるのであれば太陽光の反射が届くかも知れない、設備を設置する場所を作ることによって影響を与えるかも知れない。
とにかく何かをするという行為が何らかの影響を与える。
もっと単純な例を出すと、温度を測ることを考えてほしい。水の温度でも体温でも何でもいいが、理科の授業で水の温度を測ったことは有るだろう。
水の温度は正確に測れただろうか?
もちろん理科の授業からすれば正確に測れたと思っているだろう。だが実際にはこれも観測するという行為が影響を与えている。
例えば「水の温度を測る」ということは、「温度がわからないから測る」のである。ということは、温度計を水の中にぶっさす。その温度計は何度だろうか?
温度計の温度が水よりも冷たくては局所的にでも水の温度を下げ、熱くては水の温度を上げる。ということは、温度計を挿すことで測りたい水の温度を変化させてしまう。
水の温度と同温度にした温度計を挿せばいいわけだが、温度がわからないから温度計をさすのであり、さらには温度計を挿すということは水の対流を産み温度を変化させる。
水の温度でなくても、真冬に体温計を脇にさした時に胸キュンしたことはあるだろう。それは体温計が冷たかったからであり、脇の温度が温度計のによって変化したことを体感できたはずだ。
このように観測するという行為は観測対象に何らかの影響を与える。
これが不確定性原理の基本的な考えであり、量子力学で量子の位置を測定しようとした際に、その測定するという行為が量子に影響を与えてしまうというのが量子力学における不確定性原理だ。
冒頭の説明であればわかりづらかったことでも、その概念をつかむためにはこの例でも十分だろう。
量子力学は非常に非常に非常に訳のわからない学問で、シュレーディンガーの猫が出てきたのもうなずける。そしてアインシュタインすらも量子力学に対して「神はサイコロを振らない」とさじを投げたのもそういった理由からだ。
例えば「量子のもつれ」なんかも説明はかなり複雑だし意味がわからないと言う人も多いだろう。実際意味がわからないものであり、「量子テレポーテーション」と言った胸キュンな名称も生み出す。
これらも単純な説明があれば概念は理解できるのだが、どうもそういった説明が多く出ていない。
それによって、理解しようとすれば理解できるものでも食わず嫌いのように名称を聞いた時点で抵抗感を示してしまう人たちがいる。
周りに理解させるためには本記事のように多少暴力的だと思われる説明でも概念を伝えるために導入すべきと思うのだが。